紅花の咲く景色 | ナノ
後輩なんだけど


パチン、と碁石が置かれる音の響く教室。柳と囲碁に興じているのだ。

「いつも驚かされるな、赤城には。本当に大人しくなったぞ。」

「汚い手段を使いましたからね。あれ?コレってここに置けば私の初勝利ですかね?」

碁石を満が置くと、柳は頷いた。

「…そうだな。飲み込みが早いな。うかうかしていられないぞ。」

「見ていたのは知ってますよ?まぁ屏風の虎ですけど柳先輩も使われて下さいましたし。」

碁石を集めながら、今回の顛末を話す。不似合いな話題ではある。

「気付かれていたか。あの数で屏風の虎とは、底が全く見えないな。」

「見せ物ではありませんしあまり使いたくは無いのですよ。フランス語を取っている人が、通称は考えてくれました。マルスルージュだそうです。」

柳は首を傾げた。軍神マルスと、フランス語の赤を使っているのか?と言いたげだ。

「軍神か?」

「私もそう思ったのですがフランス語で、3月をマルスと言うそうで。柳先輩は先手です。」

コインを弾き、裏か表かで先手と後手を決めている。満はとことん、先手が苦手だ。

「今年の3月に作り出したのか?」

「まぁ、集まりだしたのが3月だと言う事ですね。基本的に私が召集をかけなければ普通です。よっぽどの事が無きゃ動かさないですし、今回は試運転も兼ねて動かしただけです。」

「あれが試運転か。赤城、そこに置いては取り合いになるだけだ。」

「え、じゃあこっちに。駒鳥だけで怯えてくれましたから楽ですよ。」

碁石を置きながら、指導もされる。柳にしてみれば優秀な生徒だ。

「使われない事を祈るしかないな。事前に連絡をして貰えた事が救いだ。」

「テニス部絡みですし、私個人なら何とでもなりますからぁぁぁって柳先輩待って下さい!」

「将棋は待った無しなのだから囲碁も当然だ。」

ガタンと立ち上がった満に柳は意外と素っ気ない。普段は頭の切れる赤也の彼女だからだ。
むやみやたらと恐れる必要は無い。しれっと負ける確率が高い、将棋の腹いせもある。

「初心者に優しくないですよ〜。」

「仁王も俺も騙す稀代の策士に勝てるうちは勝っておきたいからな。」

「柳先輩も何だかんだで負けず嫌いですよね。スポーツマンとしては当たり前ですけど。へっへー私2連勝!」

「な、もう一局だ!手加減はしないぞ。」

「え、手加減してたんですか?」

何となく、囲碁や将棋をしていると和やかになる2人だった。

「柳先輩大人気ないです!初心者なのに!」

「中学生に大人気ないと言っても仕方ないだろう。」

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