紅花の咲く景色 | ナノ
やれるものなら


柳も呆れる程、転入生は底の浅い女だった。
仲間を全員集合させて、放課後に海友会館へと向かったのだ。物陰に潜む、駒鳥達に気付かないまま待っていた。

「幸村先輩、久々に掃除行ってきます。」

「あの人かな?まぁ、適当に赤也は誤魔化すからホント黙らせて。いい加減嫌になってきた。」

「二度と話せなくするのは無理ですが、大人しくなるとお約束します。」

口裏合わせも幸村はあっさり承諾した。ファンクラブを黙らせられる、最強の満に託した方が後々楽だからだ。
満は悠々と屋上を巡ってどこだよ、とツッコミながら海友会館の屋上に辿り着いた。数は合っている。
バカ正直もここまで来ると清々しいぐらいだ。

「やっと来たわね。」

「どこの屋上か判らなかったので。時間も指定されませんでしたし。」

いけしゃあしゃあと言ってのける満に、醜く顔を歪ませる転入生一味。だが言い返せない事実だ。

「赤也君と付き合ってるって聞いたけど、どうせ脅したんでしょ。別れて。」

「個人的な事にまで介入出来る程、先輩は偉い方なのですねぇ。後、赤也は親しくない人に名前で呼ばれる事が嫌いです。そして私を甘く見ていますね。そうは思わない?私の可愛い駒鳥達。」

満が高らかに宣言すると、物陰から多数の女子生徒が現れた。
一斉に囲まれ、形勢逆転。

「あんた、1人で来なさいって書いたじゃない!」

「1人で来ましたが伏兵を置くなとは書いてませんでしたよ?連絡は大変でしたが。あぁ、カミソリ入りの手紙有難う御座いました。私に刃物を持たせてくれて感謝します。お返ししますけどね。」

満が軽く手を振ると、転入生の顔ギリギリをかすめてカミソリが光った。

「ひっ…。」

「母を狙った事は、失策にすらならない、愚策中の愚策でしたよ。もう少し頭の回転を早くするべきでしょう。想像力無いんですね。これに懲りたら、赤也や幸村先輩達に近付かないで下さい。幸村先輩は怒らせると怖い方ですよ。」

にっこりと満は笑って、部活へと向かった。駒鳥達、と呼ばれた女子生徒達は軽蔑するように、転入生達を見てから立ち去る。
恐怖もさることながら、指揮官としても優秀な満。柳が隠れて見ていたが、これだけの数を使えるのだと息を呑んでいた。
へたり込んだ転入生一味は満の、忠告と言う名の脅迫に屈し、以来大人しくなった。
満は有言実行を旨とする。

「熱中症で倒れた!?運べませんよ男子は!」

部活中は相変わらず、賑やかで結構忙しいのだ。救護要員は1人なのだから。

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