紅花の咲く景色 | ナノ
秘めたるものは


3年に、大層見目麗しい女子生徒が転入してきた。2年にまでその話は流れ、見物に行く者までいた。

「満!3年に転入してきた人見た!?すげぇ美人だった!」

「芸能人とか有名人じゃ無いんだから見に行かないわよ。美人なんだ。遠回しに別れたいのかしら?」

満はにっこり笑って首を傾げるが、教室は賑やかなままだ。

「んなワケねぇだろ。どーせ顔だけ見て仁王先輩とかあの辺にキャーキャー騒ぐだろ。…で、すいません満様。数学の宿題見せて下さい。反省してます。」

「柳先輩辺り、赤也の宿題忘れた回数数えてそうよねぇ…。昨日何かあった?テレビも特に赤也が好きなのやってなかったような気がするけど。」

理由を言わなければ貸してくれない事を、赤也はよく知っている。

「ゲームやってた事は真田副部長には内緒の方向で。新発売だったんだよ!メールしたじゃん!」

「あぁ。難易度が高いとか何とか。すいませーん柳生先輩呼んでくれます?」

「満の意地悪!自動的に真田副部長に話行くじゃねーか!呼ばないでお願い!冗談だから!」

クラスメートを巻き込む、夫婦漫才扱いになっているが朝から賑やかすぎるバカップルなのだ。
こうしていれば、満も無害だと思われている。

「赤也よく寝るし、大方寝不足でしょ。」

「だって最終必殺技難しくてラスボス強かったんだよ!倒したいじゃん!」

「ゴメン、その気持ちはさっぱり解らない。私赤也としかゲームした事無いって言ったよね。」

それに赤也は腰が低かったのだが、ふんぞり返った。自慢話をする前だ。

「まぁ、そのアレだ。ラスボスソッコー倒す俺が相手だし満も技覚えたら結構強いけど!コレは絶対苦労すっから!」

「技を覚えるぐらいなら英単語の一つでも覚えなさいよ。KOの意味解ったのかしら?調べなさいって言ったわよね。それに私はそこまでやる気ないから。」

呆れながら数学のノートを取り出す満に、赤也は何とも言えない声を出した。柳曰く、部活中のプレッシャーよりタチが悪いのだ。

「Kが解んなかった。」

「…あれだけ格闘ゲームやってて疑問にすら思わない事が私は不思議よ?」

「とりあえず倒したって事じゃん。」

「貸さないわよ。」

「ゴメン!調べるから!発音は後で聞くから!」

結局赤也には甘い満。ノートを貸してから、可愛らしいメモ帳に何事かを書いて綺麗に折った。
クラスメートの女子に渡し独自に作りつつある、組織のようなものの実験。目的はともかく結構凝った折り方もあるのだ。

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