紅花の咲く景色 | ナノ
好奇心はほどほどに


金曜は、満が不在である。よって赤也は寂しそうにしている。だが満は謎だらけでもあるから、質問責めにあうのだ。

「そう言えば根本的な質問忘れてた。赤也っていつ赤城さん好きになったの?怖いって一年生から言われてたし。」

「グリップ買いに行った時に、すっげえ速さで満脅してた兄ちゃん達、こてんぱんにしてた時の顔に一目惚れッスよ。」

凍てつくような声音、点々と赤の付いた服。更に、鮮烈なまでに印象的な笑顔。残酷で容赦ない、流血の血筋を継ぐ少女。圧倒的な強さを持ちながら多用しない自制心。
知れば知るほど、謎が深まる赤の家系図。

「顔?赤也面食いだったのか?」

「表情ッス!すっげえ可愛かったんで。メッタに見せてくんないッスよ。」

ジャッカルが首を傾げる。満は見た目こそ清楚な優等生だが、恐ろしい時に見せる笑顔が可愛いとは…間違っている気がしたのだ。

「赤城ってよく拗ねたり笑ったりしてる気がすんだけど、あれじゃない?」

「全然違うッス!もっと、こう…冷たいのに可愛くて綺麗ッス。」

「赤也、よぅ解らん。形容詞使いすぎじゃ。」

例えようもない、冷酷非情でありながら絢爛豪華な笑顔。とりあえず、印象に残りすぎるのだ。
赤をこよなく愛し、果てに血を好むようになった。母親とは真逆のやり口を得意とし、祖母にとても可愛がられた。幼い日から見続けた赤。
過酷な環境を生き抜く術であり子供心に、褒められて嬉しいと思い腕を磨いた。期待に応えたかったのだ。

「私は見なくて済む方法を探すべきだと思いますけどね。聞くだけで恐ろしいですよ。」

「うむ。赤城は祖父に剣を学んだとも聞く。流派は知らんが使う機会が無い事を願いたい。」

満の刀は、祖父による我流に近い代物だ。使った事は無い。例え腕力が女子中学生離れしていても、振り回せるものではない。
父方の祖父が、基礎だけ教えたのだ。何も知らず、幼い満が願うまま。

「満は刀を汚したくないって言うッスよ。婆ちゃんから習ったやり方が得意だって言ってたッス。」

母方の話ばかりが目立つ満の家系図だが、父方も医者が三代続いていた。後ろ暗い事の無い、清廉潔白な医者だったのだ。
晩婚であった事もあって、満と母親を残した。又従兄弟ぐらいは居るかも知れないが、父方とは音信不通。この場の誰も、知る事は無い。

「母方が凄まじく物騒な家系図だな。赤城の技術はまだ底が見えない。調べるにも危険すぎる。」

そこまでして、調べ上げたとしても後悔するだろう。

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