紅花の咲く景色 | ナノ
基準値に問題有り


ランニングを始めて、リストバンドも付けている満は体が細くなった。
脂肪よりも筋肉の方が重いので、体重の事には触れてはならない。

「満、足細くなったな。膝枕痛い。」

「ランニングの結果だと思うけど、痛いなら止めればいいじゃない。」

しかし、腰に腕を回して赤也は離れないまま言った。膝枕は昼休みにしか出来ないからだ。

「やだ。まだ真田副部長と同じ時間に起きてんの?ランニングでヘトヘトになってたのに。」

赤也の何気ない一言に、真田は一瞬反応した。職業中学生兼犯罪者予備軍の満と起床時間が同じ。
早寝早起きはいい事なのだが、如何せん怖い逸話が絶えない。何をしているんだと思いたくもなるだろう。

「勿論。予習は朝する習慣だし、昔はお母さんに起こされてたから。やる事無くなると、嫌でも勉強したくなるわよ?4時から楽しいテレビ無いし。」

「たまに本読むんだっけ?医者の話好きだよな。」

「うん。英語か日本語しか読めないから、発売待ちも何冊かあるよ。高等部に行ったらドイツ語も勉強したいし。」

この会話だけだと、非常に平和だ。3年レギュラーは噛み締めている者もいる。見ていても慣れるぐらい、イチャイチャする事が当たり前になっていた。

「俺んちでも朝早起きだからな。抱き枕まだ出来ねぇし。」

「まだ諦めてなかったの?真田先輩にあれだけお説教されたのに。」

「姉貴が邪魔しなかったら出来たんだよ!どーせまた彼氏とケンカして八つ当たりしたんだろ。」

赤也のお姉さん有難う御座います!と仁王以外は心で唱和していた。

「赤也、まだやっとらんのか?」

「はい。あんま泊まんないんす。飯は食いに結構行くンスけど。」

仁王と赤也の会話は大分食い違っている。仁王はやる事やったのか?と聞いたのだ。
すぐさま、柳生が正しい交際について、仁王にとくとくと模範生として説教を始めた。バカップルから逃げる打算も多少ある。

「赤也、足の感覚無くなりそうなんだけど。」

「あ、そうだ!体力ついたんだし試合やって!本気でやって!」

「人の話聞いてよ。本気でやったらダメって言われてるんだから、出来るわけ無いでしょ。今だって長距離走れるようになったんだって、陸上部からスカウトされてるのよ?」

渋々膝枕を止めた赤也だが満の脚力、腕力は女子中学生離れしている。ナイフ技術は人間離れ。緊急時以外使わないもので、ひけらかしてはいけないのだ。

「ナックルサーブ打ち返すクセに。」

「当たったら痛そうだから必死よ?」

打ち返すだけでも充分恐ろしい事を、満はよく解っていない。

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