紅花の咲く景色 | ナノ
朝はご注意
予習復習を怠らない満は、長らく4時起床の生活を続けている。目覚まし不要と言うか、問答無用で起こされていたのだ。
「あれ?あ、赤也の家か。今日は数学と理科っ!」
荷物から着替えを出して、赤也に似合うと言われた服を着る。顔を洗い、髪を整えて勉強するのが習慣だ。服は似合うと言われると尚更着たくなる。
5時半まで勉強をして、軽い運動を30分。それから朝食を作るのだ。
「赤也ー!起きてる?」
部屋の前でノックをする、6時15分。いつもこの時間に電話をしているのだ。休みでも習慣付けるなら毎日、と赤城家ルール。それでも赤也はギリギリで登校している。
満は余裕を持たせて起こしているのだが、報われていない。暇を見つけると、ゲームをするからだ。
「起きろワカメ頭!!」
怒鳴りながらドアを荒々しく開けたが、まだ寝ているようだ。満の眉が顰められる。若さか年期が足りないのか、シワは寄らない。
「あーかーやー!!起きなさーい!朝ご飯出来たわよ!手巻き寿司食べたくないの!?」
「食う!」
素晴らしい勢いで起き上がった赤也。好物を餌にすると直ぐに起きるのだ。休みだから、朝食はゆっくり食べられる。
「おはよう赤也。今日も、なかなか起きなかったわねぇ?」
「あ、おはよ。ご、ごめんなさい…。」
笑顔の背後に、蛇が鎌首を擡げているような威圧感。朝食を食べるまで、満の沸点は低い。些細な事で機嫌が悪くなる。あまり長続きしないが、それでも怖いのだ。
満が泊まっている日に起きないと、関節技をキメられる。
「宜しい。早く着替えて食卓においで。お魚捌いたから。」
「はーい。」
早朝の満に逆らってはいけない。赤城家でも切原家でも共通である。
「…そーいや満、リストバンド付けたまま酢飯作ったのか…?」
力のいる作業の筈だが、女子中学生にしてはかなり力の強い満だ。だとしても、驚異的な事なのである。
真田と同じ重さで、神速のナイフ捌きを披露出来る。リストバンドを付ける前、赤也もナイフが光った程度しか見えなかったのだ。
「朝からすっげえ豪華。満んち基準だよな。」
食卓に来ての第一声。
満に料理を頼むと、いつも豪華なのだ。繁盛している個人病院の一人娘で、食事は当番にしているので味気ない食事は嫌い。母が手を抜く分、満が凝っている。
「うん。文句あるなら食べなくていいわよ?」
「喜んでいただきます!」
満腹になるまで、赤也は手巻き寿司を堪能した。満は翌日の筋肉痛を心配していた。
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