紅花の咲く景色 | ナノ
素質より根性


流血カップルは、互いの家を行き来するぐらい仲がいい。
赤城家はホラー要素たっぷりだが、満の母も趣味と特技を除けば普通に優しい人だ。

「こんにちはー。お邪魔します。」

「満毎回律儀だよな。今日は全員外出、今頃新幹線で旅行先に行ってる。」

「スポーツ少年の悲しい宿命ね。だから、晩御飯作って新しいゲームに付き合えって事か。」

呆れながら、荷物を勝手知ったる切原家で置きに向かわされた。
切原家の客間は赤也の部屋の前、満しか泊まらない。隣は姉の部屋。いつもは安全を保障されている。と言っても、満は攻撃力の高さが立海1だ。余計な心配は無用。寧ろ用心棒にしてもいいぐらい。

「そ!満の作る飯美味いし早いからさ。」

「もうちょっと向上心を持って欲しいわ。お米を研いで野菜は全部輪切りにするじゃない。」

「みじん切りは覚えた!」

「ミクロな進歩ね。1人で留守番が寂しいんでしょ?赤也はカップ麺で済ませるか、ジャンクフード食べに行きたがるっておば様から聞いたわよ。台所失礼するわね。」

クスクスと笑いながら部屋に荷物を置き、満は台所へ向かい材料を確認する。満が切原家に行くと、いつも料理の手伝いや作って欲しいからと冷蔵庫の確認が習慣だ。

「昨日母ちゃん買い物行ったし、満が好きな料理の材料はあると思うぜ。」

「残念でした、仕込みに時間がかかるのよ。お母さんは手間を掛けたがらないから、短時間で作れる料理ばっかりだけど。」

そして手慣れたように料理を始める、満の後ろ姿を一瞥して赤也はゲームを始めた。

「赤也。お風呂は準備してくれないの?私に自宅でもないのに1から10までやらせる気?」

「ヤッベ忘れてた!今やるから!」

半ば家族扱いでも、満はその辺りがきっちりしている優等生。頼まれれば出来る事はする。
自宅ではかなり好き勝手しているが。自室がいい例。朝食の仕込みもついでにして、2人で他愛もないお喋りとテレビを観る。

「満、風呂先いいぜ。皿洗いはしとく。」

「じゃあお言葉に甘えて。割らないでね?」

「…気をつけます。」

笑いながら、風呂上がりは英語の簡単な問題を満に出される。正解ならキスを赤也はねだる。2人きりでなければ、意地でも満はやらないのだ。

「と言うわけで新作ゲームやろ!」

「10時までね?最近ランニングで眠くて。」

「平よりもう速いもんな。はい取説。」

「…見ながら赤也に勝てるわけないじゃない。」

ゲームの類は、満の守備範囲外だ。10時になる前に満は寝てしまった。

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