紅花の咲く景色 | ナノ
地を駆け抜けて


スタミナが本当に無い、との事を聞いて柳は満に本気で走ってみろ、とミーティング終了後グラウンドを赤也と追いかけっこさせてみた。
ギャラリーは幸村、ジャッカル、丸井だ。30秒後、赤也に追わせた。

「…ジャッカル、赤城見えたか?」

「いや、走り出してすぐ見失っちまった…。瞬間移動かアレ。」

「9分48秒…確かに速いな。本気で走らない理由は解らないが、陸上で全国どころか世界に通用するかも知れない。」

「最初の内に距離稼いでるみたいだね。ランニングさせてみようか。」

好き勝手言っている三年達をよそに、流血カップルは息を荒くして肩で呼吸をしている。赤也も必死だ。

「何で赤也追いついちゃうの!?鬼ごっこでもよく捕まったけど!」

「だから満、スタートはメチャクチャ有り得ねぇ速さだけど、すぐスタミナ切れで見えるようになるんだって。でも今のが本気だったのか?」

「本気よ。逃げ切ったら柳先輩が、旧字体の夏目漱石貸してくれるって言ったもん。頑張っても赤也には追いつかれちゃうか…。」

女子生徒相手なら高確率で逃げ切るのだろうが、満にスタミナが無い事を知るのは立海レギュラーだけだ。阿久津も勘違いしている節がある。うなだれる満に赤也は頭を撫でながら

「しょうがないって。俺毎日走ってるようなモンだし男だから体力あって当たり前なんだろ。」

「夏目漱石…。100メートルなら負けない自信あるのに!」

「だって満、本気でやっちゃダメって満の母ちゃんに言われてんだろ?」

「それはそうなんだけどやっぱり悔しい。お婆ちゃんちじゃ短距離は私が一番足速かったの。」

ムスッとむくれる満を宥める赤也。満が大人びて見える事が多いが、結構な負けず嫌いでたまに子供っぽい仕草を見せる。
それに赤也は弱い。

「赤城さーん!面白い事思いついたんだけど、俺達と一緒にランニングしないかな?体力付いたら赤也に負けないどころか立海1足の速い生徒になるし。」

「基礎的な速さは相当なものだからな、確率を出すまでもなくジャッカル以上に速くなる。乗ってくれるなら夏目漱石を貸すし、赤城の好きな病院系の本を図書館だが紹介しよう。」

「やります!」

かなり現金ではあるが、好きなものは好きだ。目の前の餌、しかもメリットばかりだから食いついた。

「幸村君…俺、赤城より足遅くなりそう…。」

「いや、引き合いだっけ?あれに出された俺は確定だから本気で立海1足速くなる気がする。」

そういう訳で、満はランニングに参加するようになったのだった。

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