紅花の咲く景色 | ナノ
集中力が高まると


真田家に集合したレギュラーと満。満はプレイヤーとヘッドフォンを持ち込み、ただひたすらに暗記教科の書き取りに勤しむ予定だった。

「…満、ヘッドフォンは止めとけ。後悔するから。俺は平気だけど。」

「何で?集中するなら音楽聞いていいじゃない。そこまでヘヴィーな曲聞かないもの。質問の時は肩叩いてくれたらいいし。」

きょとんと首を傾げ、目を瞬かせる最愛の彼女に赤也はあっさり引いた。あまり可愛い仕草を、見せびらかしたくないのだ。例え全員が怯える彼女でも。

「赤城は何勉強すんの?」

「世界史です。暗記教科は書いて覚える主義ですし、基本的に解らない問題は無い事を確認しました。」

正座でテーブルに座りながら、ジャッカルに笑いかけて満は教科書と自習用のノートを広げる。
ヘッドフォンを装着し、話し掛けるな!と言わんばかりに勉強を始めた。赤也以外は気にしないようだが、大いなる間違いで暴挙だ。昼下がりの初夏に冷や汗をかくとは欠片も考えていない。

「幸村部長、真田副部長。念の為…注意しといて下さい。」

「?何か問題があるの?」

「特に害がある訳が無かろう。集中したいのであればそうさせればいい。」

そんなこんなで、赤也の忠告も虚しく勉強会が始まった。真田、柳生、柳は苦手教科を教えながら自分の勉強をする。
暫くしてから、トラブルは起きた。乗ってきたようでリズミカルに書いていた満の口から、歌詞が零れ落ちた。

「いきーちをそそがせあかくあかくー。」

ああやっぱりやったよこいつ。と赤也は頭を抱えた。三年レギュラーは固まってしまった。

「赤城さん…歌うのは止めてくれるかな?」

幸村が満の肩を叩き、顔を上げて赤也を見る。赤也は頷いてヘッドフォンを満から取った。満の顔が見る見るうちに赤くなる。

「な?だから言っただろ。満集中すっと歌い出すんだから。」

「ゴメン…。穴があったら入りたい…。恥ずかしいわこれ。」

顔を覆っているが、耳まで赤くなっている。
選曲に問題がありすぎた。

「ワンフレーズなんがおっとろしいのう。」

「歌詞は偶然ッスよ。こないだはアイドルの曲でしたから。」

「恥ずかしいから言わないでお願い!」

「聴くとは知っていたがまさか集中していると歌うとは。」

「ま、まぁ…赤城もそういうの好きなんだな。」

「丸井君、纏まっていません。」

赤也と満以外、嫌な汗を久しぶりにかいた。無意識だというのが、タチが悪い。曲目を見ると、無節操にヴァイオリンを使った曲ばかりを集めていた。

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