紅花の咲く景色 | ナノ
悩まずにはいられない


昼休み、久々に赤也の耳掃除をしていた満は真剣に深刻な悩みに直面していた。思わず溜め息が落ちる。

「あれ?珍しいな赤城がなんか悩んで…ゴメンやっぱ聞かない。」

丸井が首を傾げたが、嫌な予感と言うかろくでもない悩みだったらイヤだ、と言う本音が見え隠れする。

「丸井先輩…私は単にテストで如何にして首位を保ち赤也を赤点から救うかで悩んでいるだけです。」

その赤点の危機に直面している赤也は、うとうとと気持ちよさそうに寝ている。満でなくとも、向かっ腹が立つ。

「優等生とバカが付き合うとこうなるんだな…。」

ジャッカルがしみじみと呟いた。散々英語を教えてくれと言われた割に、赤也は結果が惨憺たるものだからだ。

「確かに以前と比較すれば単語力は上がりましたが、何だか私の努力が報われていない感が否めなくて。赤也、逆の耳。」

ティッシュで耳掻きを拭きながら赤也に告げると、生返事と一緒に寝返りを打つように首を捻った。

「赤城が教えていたのか。道理で俺に聞きに来なくなった訳だ。」

「キーセンテンスすらロクに覚えないんです。いっそ見捨てたいのですが、ジャッカル先輩や柳先輩に泣きついてまた私が教える羽目になりそうで。」

もうじき中間考査。かなり切実な満の悩みだ。下手に突き放すと、大騒ぎされかねない。
人気者の彼女も色々悩みはある。

「部活も休みになるし、誰かの家でみんなで勉強しようか?赤城さんだってテスト前は勉強するでしょ?解らないところは俺達が教えられるし。」

「とりあえず赤城んちは無し希望じゃ。」

輝く刃物に囲まれて勉強など、三年レギュラーは誰一人として望まないだろう。スペースにも無理がありすぎる。仁王も一人暮らしなので生活スペースは広くない。
赤也を除くメンバーで相談した結果、真田の家に集合する事になった。赤也が起きていれば大反対しただろうが、寝ている赤点の危機に瀕した赤也に発言権は無い。

「俺の家ならば集中も出来るし、邪魔が入る事も無いな。学生の本分は学業だが赤也は果たせておらん。嘆かわしいな。」

「そうですね。切原君は一年生の時から英語は苦手で意味を知らずに使っていた事も多々あります。」

ゲームの影響で多少知っているのだが、かなり偏っている英単語の知識。満も何かにつけて教えているが、本当に苦手なのだ。

「しかもイタリア語やフランス語も、中途半端に覚えていますからね。有名なものでカタカナになるものばかりですが。」

勉強会は色々と苦労しそうな気配だ。

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