紅花の咲く景色 | ナノ
朱が黒に染まらない理由


合宿終了、となり1日休みになった立海男子テニス部は、好きなように休みを満喫する。赤也は約束もしていたのでデート。

「満、今日はゲーセン行こうぜ?新しいゲーム入ったって聞いたから!」

「今日も、でしょ。本当にゲーセン好きね。終わったらお買い物に付き合ってよ?」

必ず、赤っぽい色の入った洋服を着る満。アクセントであったり主役であったりする。
毒々しさは無く、清楚で真面目な雰囲気だ。

「うん。また新しい服?」

「そうね。この前結構気に入ってたシャツ汚れちゃったから。」

「そーいやこないだ着てたスカート可愛かった。あんま着て欲しくない。」

似合うからこそ、自分以外の男の前で着て欲しくない複雑な男心。赤也は姉がいるから、似合う似合わない程度は解る。

「朱色のレースを使ったスカートかしら?気に入ってるんだけど。」

「似合うし可愛いから着て欲しくないんだよ。柳生先輩清楚系好きだし。」

「難しいなぁ、赤也。それに血生臭い清楚系ってアリなの?」

「満はそーゆーの言わないよな。うん、言われて気づいた。無い。絶対無い。柳生先輩逃げそう。」

「だよねー。赤也はファッション無難だし、格好いい自慢の彼氏だもの。」

ニコニコ笑いながら、ベタベタイチャイチャとバカップル炸裂しているデートだったのだが。
帰り際、近道を使ったところ絡まれてしまった。毎回ではないのだが、初々しいカップルに僻みを持つ者はどこにでも居るものだ。

「…満。俺出場停止食らいたくない。」

「了解。さぁてお兄さん達人生棒に振るのと命落として家族泣かせるの、どっちがいいかな?」

にっこりと笑って、ナイフを持つ満。見た目はか弱い女の子だから、軽く見られて当たり前。
そして満もそこに付け込むのだ。

「オイオイお嬢ちゃん、そんなモン振り回すとお兄さん殴るよ?」

「じゃあ人生棒に振ってもらいまぁす。痛いから叫んでもいいよ?」

敏捷性にかけてはあらゆるスポーツを嗜む者を凌ぐ。風のように走り抜け、ワザと痛みを感じる場所を瞬く間に切った。
恐ろしいまでに楽しげな笑みを向け、悶え苦しむ男達を見下ろす姿は紛れもなく死神。

「ふふ、このぐらいの距離なら息切れなんてしないし鍛えられたかな?赤也、警察呼んで。」

「呼んだ。ホント一瞬だよなぁ。見えねぇし。満もリストバンド付けるか?お揃いにしたいし。」

一滴も浴びず、致命傷を与えず、出血を増やすが放置しても問題ない切り口。赤也は慣れて、腕を見ているだけだ。
警察とも仲のいい赤城家。闇に消える事件なのだ。

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