紅花の咲く景色 | ナノ
朱は未だ微睡み


午前中は練習をして、昼食後帰宅する。
青学は早々に帰ったので、立海、氷帝の半ば同盟を結んでいた彼らは力尽きたように、互いに協力しあった他校のライバルであり親近感のある面子と思い思いに話していた。
中には涙すらしている者もいる。

「氷帝の皆さん、ご協力有難う御座いました。二度目が無い事をお互いに願いましょう。」

「そうだな…。そう言えばアンタ体術やってるって聞いたんだが何だ?」

「さて?祖父直伝の我流と言うか関節技しか習ってないから。1秒あれば狙った場合、確実に終わる自信あるし。日吉君も朝早くて何か型の練習してたね。」

「解りやすく言えば古武術だな。」

「へーぇ。やってみたいけど」

「満!頼むからこれ以上強くなるな!」

荷物を抱える赤也が悲鳴を上げ、日吉と満は顔をそちらに向けた。切実な大問題なのだ。

「ってなるのよ。うちのお母さんはかなり鈍ってるけど狙えば逃がさないから気をつけた方がいいわ。」

片や由緒正しく歴史ある嗜み、片や血塗れの家系に受け継がれる負の歴史。攻撃には違いないが、やり方が全く別物だ。

「次に会う時は大会にしたいな。アンタみたいな女庇うのは懲り懲りだ。」

「黙って守られてあげるお姫様なんて、なれっこないから。」

「でも、切原君は赤城さん本当に好きなんだね。」

「まぁ、恥ずかしいけど一緒に居られる事は嬉しいからね。」

二年生同士、あれこれとカリキュラムについて話したり部活について話したりと親密になっていた。恐怖を乗り越えると、意外に呆気ないのだ。

「…ところで、さっさと帰らないのか俺達。何か宍戸さんと忍足さん泣いてないか…?」

「ジャッカル先輩も仁王先輩も目元押さえてるね。最初から私呼ばなきゃ良かったのに。」

「あ、そうか。赤城さん知らないんだっけ。水の方が美味しく感じるんだよ、青学マネージャーのドリンクって。まぁここの水が山水なのもあって美味しいんだけどね。」

「あ、そうだったんだ。道理で顔洗った時冷たいなとは思ったんだけど。」

「ついでに、化粧と香水臭さが最悪だ。ボールぶつけてやろうかとも思ったぐらいな。」

「だから氷帝の跡部さんが満呼んでくれって頼んできたんだ。うるっせーからあの女。ファンクラブみたいな感じか?」

満の肩を抱いて赤也も交えてお喋り。
三年レギュラーは青学を叩き潰す!と互いに誓っていた。氷帝がダメでも立海がいる、ではなく、早い者勝ち。それだけ腹が立っているのだ。
さり気なく、携帯を持つメンバーは交換していた。

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