紅花の咲く景色 | ナノ
朱と掲げる杯


立海、氷帝の血の滲むような涙ぐましい努力。明日には合宿も終わる、というところで一触即発の危機に瀕した。牙を剥いた青学に、もう呆れ返った両校。

「汝、闇の朋友にして眷族。流される血に酔う者。朱に染まりし業を背負う娘。数多の人間に恐怖を与え、その手で眠りに就かせんとす。即興ですが、赤城さんはインスピレーションを実に与えてくれます。」

「ポエマーじゃのう、柳生は。ちゅーかそれ、おっとろしか。」

「満、眷族って何?」

もうバカには付き合ってられないから、と氷帝も立海もすっかり寛いで昼間の事など無かったかのようだ。三年レギュラーと氷帝は現実逃避も…かなりある。

「うーん、一族って言うか家族みたいな意味もあるし付き従う人って意味もあるからどっちかな。まぁ、私も漢字これ書けないや。読めるけど。」

「ところで赤城。何故万年筆を出したのだ?無用であっただろう。」

「あぁ、理由は簡単ですよ真田先輩。私が万年筆の立海の女子生徒だと証明して柳先輩からお聞きした幼なじみのデータマン、乾さんに情報を流す為ですよ。私は嫌われても痛くも痒くもありません。赤也が居てくれるなら。」

ソファに座る満の腿に、頭を乗せて自宅並みにリラックスしている赤也。流血沙汰にならなかっただけ奇跡的なのだ。普段の満を知っているからこそ。
ナチュラルに惚気を言われても、全員慣れている。

「つまり、赤城はあの迷惑甚だしいマネージャーなど眼中に無かったのか。俺達のみならず跡部も騙すとは大した女だ。」

「だって赤城さんは本当に部外者だし、本来なら来なくて良かったところを無理矢理呼んじゃったし。アレ居なきゃ何事も無かったのにねぇ。」

「だよな。結局跡部は尻尾掴めなかったみてぇだし。青学を赤城から守って首突っ込ませない方に頑張った気がする。」

「丸井先輩は満に何度も手当てさせてたじゃないッスか。」

口々に今回の合宿について反省や、不満を撒き散らす立海レギュラー。殆どは青学マネージャーによる大迷惑だ。
また合宿があった場合も想定して、あれこれと考えている。精神的に辛い合宿だったのだ。

「でも赤城には悪かったな。氷帝とウチのコート何回も往復させて息切れしてたし。」

「スタミナは無いんです。それはもう母が嘆く程無いんです。トップスピードで2分走り続けられたら御の字ですよ?ジャッカル先輩はスタミナ凄いですから羨ましいです。」

「満が本気で走ったらすぐ見失うって。柳先輩も調べたがってんじゃん。」

こんな感じで合宿最終日前日の夜は更けていく。

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