紅花の咲く景色 | ナノ
朱を思い出す


黒板に日付や、曜日が書いてある事は一般的だが…赤也はそれを見て呻くように呟かずには居られなかった。13日の金曜日。

「13日の金曜日…。」

「だねぇ。確率的に高いって聞いたよ。柳先輩辺り詳しいんじゃないかしら?日付計算出来たら尊敬しちゃう。」

そういう問題じゃない、と赤也は満を見つめた。比較すれば華奢な体でも、満は効果的に傷付ける方法を心得ているからだ。

「いや、満がチェーンソー振り回さないか心配なんだって。」

「腕力無いから安心して。バサバサ切れるものでもないしね。」

かなり重いチェーンソー。満は持ち上げるだけでも大変なのだ。軽業を得意とするので畑違いでもある。

「脂肪で切れ味悪くなるからだっけ。…満と付き合ってからアブナい知識増えてんだけど。」

「インパクトあると忘れないらしいからね。テスト前にそっち系の話してあげよっか?私いっぱい知ってるよ〜?」

「止めてくれ頼むから。満のお陰でだいぶ授業解るようになったんだし。」

赤也はかなり必死だ。満による懇切丁寧なマンツーマン指導により、赤也の成績は見違える程上がった。
あらぬ嫌疑を掛けられるぐらい、驚く程に上がったのだ。以前よりは。

「それでも現在完了解ってないクセに。」

「変態の満が首位だって認めたくない。」

「やーい現実逃避ー。この間の実習もリタイアしてたよね。」

「満以外全員な。」

ジト目で満を見る赤也。
何故か立海では解剖実習があり、先日満は華麗なメス捌きを披露した。解剖自体も怖いが満も怖くなる授業だったのだ。

「別に動かないのに。動いたらお母さんにプレゼントするけど。」

「いや、それこそホラーじゃんか。怖いって。」

それにクラスが大パニックに陥る。
見えない物は怖がらない満は、幼い頃から見える恐怖と育っているから当たり前と言えばそうだ。医者が怖がってしまえば話が始まらない。

「冗談よ。動くワケ無いじゃない。悪趣味増やされたら敵わないわ。今ですら行きたくないんだから。」

「…何で俺満大好きなんだろ。怖いの知ってんのに。母ちゃんも姉貴も満気に入ってたしなぁ。」

「あら、そうなの?嬉しいなぁ、私お姉ちゃん欲しかったんだ。」

「怖い意味に聞こえるからソレ止めてくれ。」

満の隣に座り、赤也は切実な…立海の生徒なら誰もが願う事を口にした。
満を止められるのは赤也だけで、2人して暴走すると考えるだけで怖い。満は簡単に怒らないが赤也は沸点が低い。
互いに止めあえるカップルなのだ。

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