紅花の咲く景色 | ナノ
朱が残すもの
情報漏洩など言語道断、と言いかねない満達。わざわざ氷帝と立海で藪をつつかないように、と心砕いていたメンバーの思いを青学は綺麗に砕いた。
それは同時に、血の杯を呷る大人しいが小さくとも必殺の牙を持つ、満への宣戦布告に等しい事だった。
「赤城さん!ゴメン、忙しそうだけど桃が怪我しちゃって!今マネージャー手が放せないからお願い!」
「解りました。日吉君、後をお願いしていい?」
「あぁ。気をつけろよ。」
「日吉君が言う程転ばないってば!菊丸さん、行きましょう。」
背を向けて走り出す日吉は先ず跡部と忍足に伝えて、立海へ急がなければ万年筆が光ると信じて疑わなかった。あながち間違っていない事が何とも言えない。
「跡部部長!赤城が青学の菊丸とか言ってた奴に」
「忍足!宍戸!今すぐ行け!向日は立海に!日吉、お前も赤城を追い掛けろ。俺様が派手に倒れた事にしておけ。」
全部言わなくても重大さが解る氷帝。目の前で並大抵では出来っこない真似をされたのだ、切実にもなるだろう。
「…あれ?あの、菊丸さん怪我人は…?」
「赤城さんによく話を聞きたくてね。どうして、立海の生徒が跡部に呼ばれるのかな?」
柔らかい笑みで、刺々しく不二が尋ねる。しかし、満は首を傾げた。
「立海と氷帝は練習試合をした事がありまして、その際に知り合いました。マネージャーは不在ですから、私が立海で手伝いをしていました。赤也の彼女で、外科医の娘ですから手当てを心得ています。それ以上も以下もありません。」
不思議そうに告げる満は、緊張感が微塵も無い。確実に勝てると自負しているからだ。
「ならさぁ、なんで氷帝が構うんだよ?」
「桃城君、そんな事まで私は知らないです。ご用件は以上ですか?そろそろ氷帝の休憩時間ですから」
「ふっざけんなテメェ!」
桃城が殴りかかろうとした瞬間、慌てたジャッカルと宍戸が羽交い締めにし、万年筆を出した満を幸村と赤也が引き離した。
「落ち着けお前!ヤバいから!本気でヤバいから!赤城殴ったら色々終わるって!」
「せや、落ち着きぃ桃城。赤城さんは切原ん彼女やで?」
「赤也、赤城さんの万年筆仕舞わせて。間に合って良かった…ホント良かった…!」
半袖でありながら、何処から出したのかも判らない早業。単にTシャツの裾、縫い目に仕込んでいただけだが反射が速すぎる。
「満、まだ未遂だから。もうダメだからな!」
「あ、せや赤城さん。跡部が倒れてもうた。」
口裏合わせは完璧。
幸村は青学メンバーに恐怖を残してから最後に立ち去った。
満は、万年筆でストーカー撃退した話が有名だが他にも武勇伝がある。と。
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