紅花の咲く景色 | ナノ
朱の本領は眠る


転んでもタダでは起きないと言う事があるが、満の場合一矢報いるどころか、足を踏むか転びながら致命傷を与えかねない。
立海と氷帝の目的は2つ。マネージャーを誰もが納得する形で追い出す。満の恐ろしい特技を青学に見せずに、合宿を終える。
妥当な案ではある。

「く、桑原君…さっき、赤城さんがウザいって…叩かれた…!どうして?」

休憩時間に声を掛けられたジャッカルだが、どれだけ温厚であっても満の遣り口を知っている。まず有り得ない。
満ならば軽く服を切るぐらいの脅しはする。それもまた、やられたらやり返す性分だから簡単には引き出せない。
満に言ってはいけない事をマネージャーが言える状況ではないのだ。赤也の彼女である事を否定されると、満は纏う空気が変わったように見える程、冷たい目になる。

「赤城が叩いた?あいつは何があっても叩くなんて事しねーよ。暇人、仕事しろよ減らして貰ったんだから待ってんじゃね?」

突き崩すなど、夢のまた夢で砂上の楼閣。難攻不落の立海による罠に、マネージャーは落ちた。
赤也は長く片思いをしていたのだから見ている。それが根拠なのだ。嘘が苦手だからこそ信頼出来る。

「待った無し、でしたよね?柳先輩。」

「…何故後手だとこんなに強くなるんだ赤城は。」

「対処を覚えてから攻勢に出る、と言うのが得意なんですよ。母方の人は先手必勝タイプが多いもので。作るまでは同じですけどやり方が全く違うんです。」

将棋の話をしながら、先の事を相談している。罠にかかったマネージャーがいつ気付くか。そして青学はどう出るか?と話す。

「仁王の詐欺に見事引っかかったんだってな、ジャッカル。」

「あぁ。ウザい、なんて赤城使わないからな。教科書みたいな日本語で普段話してるし。そう言う丸井は何か聞いたか?」

「へっへっへー。芥川って氷帝のよく寝てる奴いんだけどさ。起きてる時にたまたま聞いちまった事教えてくれたぜ!明日、赤城を適当な理由で呼び出して化けの皮剥がすって。幸村君、コレヤバくないか?」

「全然ヤバくないよ。赤城さんと柳がやるだろうって言ってたし。でも、どうするの?」

「私が呼ばれる場合、立海か氷帝の方がいらっしゃる可能性は98%だそうですから、その方がどちらか、または両方に伝達して頂く事になります。大方、あの暇人さんの手が塞がって怪我人が出たとかその程度で囲むのでしょう。」

「赤城は短距離ならここの誰よりも速い。本気で逃げようと思えば一瞬で切り抜けるだろう。」

満と柳の思惑が、複雑に絡み合っていた。

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