紅花の咲く景色 | ナノ
朱は健気に嘲笑う


青学とは接触が皆無に等しい満だが、マネージャーの虚言により不信感は高まっていた。

「無視なんて本当に2年なの?しかも部外者だって言い切ってて自分は何でも出来るとか勘違いしてるのかな。」

不二が露骨に嫌そうな顔をしながら呟く。マネージャーに全幅の信頼を置いているのだろう。

「わかんない…私、何か嫌われるような事したのかな…謝りたいけど…。」

「謝る事ないよ!何もしてないんでしょ?赤城とか言う奴が悪いっ!」

この場に立海レギュラーが居たら凄絶な罵詈雑言を浴びせられそうな会話だ。彼らとて中学生、視野が狭いのは責められない。
菊丸は憤然として、マネージャーを庇う。知らない方が幸せな事と無知が不幸を招く事は遠いようで近い例だ。

「赤城満…どこかで聞いた名前だな。」

ぽつりと大石が呟いた。それもその筈、護身用万年筆発売のきっかけを作った張本人だ。

「去年の秋に、ストーカーを万年筆で撃退して一躍有名になった立海の女子生徒だな。刺すのが精一杯だろうが一年生の女子だ、慌てたのだろう。氏名と学年は一致する。」

乾の推測は限り無く真実に遠いものだが、予測は不可能に等しい。

「あー!それ俺もクリスマスに貰った!」

「…英二。俺もだけどそれは関係ないだろ。本人かはまだ判らないし。」

そして満が本人だと知っても、彼らは敵意を隠さないだろう。知ってからどうするかが命に関わる。
一番は知らぬ存ぜぬを貫いて近付かない。しかし、怖いもの見たさや真偽を見極めたい欲求に勝つのは難しい年頃だ。
満は成績優秀な明るい少女であり、冷酷非情な腕利きの殺人鬼予備軍でもある。玄人同士ならば、暗黙の了解が成立するのだが彼らには無理だ。

「でもその赤城って女、センパイ無視したんでしょ?ジェラシー?」

「だとしたらバカだしやっちゃいけねーな、いけねーよ。」

ここまで盲目的に信頼しているというのも、若気の至りだろうか。
そして本気になった満にかかれば、選手生命はおろか生命さえ断たれかねない上に、汚名を背負って生きなければならなくなる。

「…にしても、氷帝もあの女贔屓にしてたッスよ。いきなり来て、ちやほやされていい気になってんじゃないッスか?」

「元はと言えば跡部がヘリまで使って呼んだらしい。何故赤城なんだ?氷帝が立海の生徒を呼ぶ理由が解らない。」

推測ばかりが飛び交う夕食で、過激派は満の化けの皮を剥がそうと企んでいた。それが氷帝と立海メンバーに多大なダメージを与えるとも知らずに。

- 41 -


[*前] | [次#]
ページ:






メイン
トップへ