紅花の咲く景色 | ナノ
朱の奥は黄昏
そしてその夜。
立海レギュラーは雁首揃えてミーティングと言う名の会議。無論議題は満を呼ぶか、否か。かなりのリスクを伴う博打だ。
「跡部、勇者だな…。」
「勇者ってか悪魔化した赤也知らねえだろ。キレた赤城の怖さも。」
丸井とジャッカルが氷帝の泊まる方向を眺めながら呟く。やっぱり怖い。
「ジャッカルと真田と柳が避けさせてくれとるけん俺も、あん香水臭さは懲り懲りじゃ。露骨すぎて気持ち悪ぃち。」
「…あの、先輩達。満は俺の彼女ッスからそこまで嫌そうな顔しないでくれません?」
重苦しい空気が漂う中、完全に満を信頼している赤也が首を傾げる。
基本的に、攻撃されなければ反撃しないのだ。攻撃されそうになると、反射でかわして切る腕はあるが。
しかし、柳がノートを机に置いて悲鳴のような声を上げた。
「赤也!跡部達はあの生物兵器クラスに危険な赤城を呼べと言ったんだ!83%の確率で傷害事件を起こすぞ!?」
「柳君落ち着いて下さい。跡部君達が2つの事件を知らないままでも、苦渋の決断だったのでしょう。」
「うむ。問題は万年筆だ。持たせるべきか、否か。赤城は半袖でも文房具を仕込みかねん。」
手口は公表されていない、変質者撃退事件。そして悪魔化した赤也を前に、柳が一瞬見た恐ろしい目。
殺人への欲望は薄く、自制しているから無害なのだ。腕力も女にしては強く、瞬発力は男を凌ぐ。徹底的に叩き込まれた教育は、活きているのだ。
「まぁ、香水と化粧の悪臭よりは血の臭いの方がマシなんじゃない?」
「幸村部長、満を勝手に連続殺人犯みたいに言わないでくれません?」
それに満からは消毒薬の匂いはしても、血の臭いはしないのだ。
「ある意味究極の選択ですね…。悪臭とドリンクと媚びるあの人に耐えるか、極力接触を避けさせてプレッシャーに耐えるか。赤城さんの事ですから、万年筆は持って来るでしょう。」
「刃物は持ち込み禁止にするよな?幸村君!」
「持たないと思うよ。万年筆すら立派な武器に変えちゃうんだし。」
「…あの。どれだけ満呼ぶの嫌なんスか?氷帝も協力するって言ってましたし、満は氷帝と俺らにドリンク作って手当てするだけじゃないンスか?」
全員が赤也を恨むように見た。とばっちりに近い。
「確かにね、赤城さんに勝てる人はこの世に1人しかいないよ?そっちの方が危ない事も知ってる。」
「赤城の母君が赤城を止められるかは判らんが、とりあえず師だ。」
だからこそ怖くて呼びたくないし、神経をすり減らす事になるのだと赤也に語ったが、結局満を呼ぶ事になった。命懸けの合宿が始まる。
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