紅花の咲く景色 | ナノ
鋭利で丈夫なもの


赤也と付き合い始めた当初は、脅したのではないか?などのあらぬ疑いを掛けられ靴箱にカミソリレターを入れられた事もあった。
しかし人の噂は流れるもので自然と嫌がらせは無くなった。
これも話し合いの結果に他ならない。

「あれ。なんか久しぶりな気がするわ不幸の手紙。画鋲かな?カミソリかな?斬新な内容かな?」

満の靴箱に一通の手紙。送った方が不幸になる手紙と言ってもいいだろう。
白い封筒を手にしてまじまじと眺める。喧嘩をしていなければ部室から教室まで一緒の赤也が、そんなものを見逃す筈がない。
満の手から手紙を奪い、溜め息を吐いた。満に危機感が無いように見えるのだ。

「またかよ。カミソリなんて満に与えちゃいけないもの入ってないかチェックすっから。」

「与えちゃいけないものって赤也…私はグレムリン扱いなの?」

「カミソリで満が指切った時半ギレで犯人探しして、結局見つけた途端転校したんだろ?あぶねぇって。ただでさえ刃物の扱い上手いって噂だぜ?」

「探しただけよ。危害は加えてないわ。刃物は普通に使うわよ。ハサミも包丁も刃物じゃない。」

軽口を叩きながら赤也が手紙を見ると、カミソリなどの嫌がらせではなく放課後に校舎裏に、と書いてあり思わず握り潰した。
校舎裏は告白の定番スポット。手書きだからリンチの呼び出しでは無い、と判断したのだ。

「…赤也、どうかした?何か面白い事でも書いてあった?」

「放課後に校舎裏って書いてあった。満!絶対行くなよ!?」

「宛先間違ったんじゃないの?それと校舎裏って広いから解んないわ。」

「満の名前書いてあったけどさ…何でそんな細かいツッコミ入れんの?」

「海風館と見せかけて海林館まで走らせた事があったから。奇特な人も居るんだねぇ。彼氏なんて夢のまた夢だと思ってたし。赤也ぐらいじゃないかなって諦め入ってたし。」

「海風館から海林館ってひでぇな。ま、満は俺の彼女だし?行かなくてもいいだろ。部活あるし。」

それはそれで差出人が気の毒なのだが、騒音止めと救護要員を兼任している満が席を外すとファンクラブが調子づくのだ。
実力で黙らせた事は無い。女の子は噂話が好きな事を満が利用したのだ。

「説明すれば幸村先輩ならちょっとの遅刻は許可してくれるんじゃない?私テニス部員じゃないし。」

「ダメ。」

満の手を取り、赤也は手紙をゴミ箱へ上手く投げ捨てて教室に向かった。
バカップルだと知っているのは100人に満たないのだ。

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