紅花の咲く景色 | ナノ
優しい彼女は


朝型の満は、ドラマを観ない日は10時就寝で起床時間は4時。稀に叩き起こされて医療助手をする。
対する赤也は朝練や集合時間に遅れそうになるので、毎朝満がモーニングコールをする。
それでもダメな時はダメなのだ。

「赤也…いきなり抱きつくってどこのお子様よ。」

「だって…今日5時間持久走と素振り3000本で3ヶ月部室掃除って真田副部長が…っ!」

「自業自得じゃない。私はちゃんといつもの時間に起こしたわよ?」

口調は呆れながらも、困ったように笑いながら赤也の背中を軽く叩く満の姿は、まるで母親のようだ。

「一緒に帰れねぇじゃん!満待つのも待たせるのも嫌いだろ!?」

「ご名答。待ち時間決めるなら待っててあげる。」

「マジ!?やっぱ満大好き!」

力いっぱい抱き締める赤也に、満は苦しそうにする。全国区のテニス部レギュラーに抱き締められては、さしもの満とて苦しい。
基本的にヒットアンドアウェイで攻撃するのだから。

「赤也、苦しいから。」

我に返った赤也が力を緩めるが、離さない辺り溺愛ぶりがよく解る光景だ。
そんな2人を見ながら、幸村が呟いた。

「部活中、手当て以外は赤城さんに接触禁止にしようか。」

「確かに休憩時間の殆どを赤城とのお喋りに費やしているな。」

「しかし、赤城が了承するのか?結局赤也には甘いではないか。」

ビッグ3の呆れ返った視線にすら、赤也は反応しないのだ。満しか見ていない状況に近い。満は気付いているが、普通気付かないだろうと無視だ。
まさに2人の世界。

「それなら大丈夫。赤也を強くする為だって言えば赤城さんも頷くよ。」

「赤也は依存に近いからな…。俺が交渉しよう。幸い月曜は将棋の約束をしているからな。チェスをしていたそうだが、将棋もかなり強いぞ赤城は。」

「ほう。俺も一局相手を頼んでみるか。」

渋いと言うか、じじくさいと言うか…頭脳戦も巧みな満は柳相手に、互角以上の戦績を残している。
ますます強くなる満との将棋は柳の密かな楽しみであり、囲碁をさせたいとも考えているのだ。

「何分待ってくれんの?」

「20分。日も長くなったし、本でも読みながら待ってるわ。」

「…頑張る。」

赤也はよくロッカーを散らかすので、掃除をするようにとしょっちゅう真田や柳生に叱られているのだ。
この3ヶ月は整頓に気をつけよう、と赤也が思うのも無理もない。近所では無いのに、無理矢理満と帰っているのだ。
部活終了後、満はさっさと帰ろうとする。食事当番もあるからだ。

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