紅花の咲く景色 | ナノ
人気者の宿命


調理実習は、女子生徒の戦場となる。胸一杯の好意を詰め込んだ手料理で、意中の男子を射止めんとするからだ。
だが、悲しいかな女子中学生。
日常的に料理を嗜まない者が、いきなり難易度の高い料理を作れる筈も無い。

「ジャッカル先輩、先程調理実習で作ったものですがいかがですか?」

「あれ、赤城珍しいな。赤也にやんなくていいのか?怒るだろ。」

満はにっこりと笑って手を振った。嫌な予感がジャッカルを襲う。

「ご心配無く。クラスメートの皆様が、一体何をどうしてそうなるのかこちらがお聞きしたい物体を油断して食べてしまって、現在意志疎通が出来ないのです。丸井先輩達はあの通り逃げ回っていらっしゃいますから。余りもので宜しければどうぞ。」

廊下に響く女子生徒の黄色い声、遠い筈のクラスから逃げ回る仁王と丸井。匂いからして嫌な予感がするのだろう。
柳生や幸村は、貰うだけ貰って後で選ぶ。満の恐怖よりも、命懸けになるのは仕方がない。

「あぁ…毎回大変そうだよなぁ。」

「今回は自前で自信作を作ると言う建て前だったんですけどね。お昼ご飯にでもいかがですか?」

「何作ったんだ?」

「キドニーパイです。ちゃんと赤也の分もありますからご安心を。ジャッカル先輩も充分格好いいと思うんですけど…女の子は不思議ですね。」

「赤城もそうだろ。ま、幾つか押し付けられたけどヤバい匂いしないな。ありがとな、赤城。」

「いえいえ。この時期なら冷蔵庫で2日は保ちますしレンジでチンするだけで違いますから。」

これでもかと調味料やハーブを使う、仕込みから味付けまで手の込んだ料理を作る事が、満のマイブームなのだ。

「へぇ、詳しいな。」

「それでは失礼します。2クラス合同女子のみなんて無茶な企画ですよね。」

「あー。数が多いのはそういうワケか。」

ちなみに、男子は被服を行った。知らなければ疑わないだろう。
そして昼休み。赤也と満はイチャイチャしていたが、心なしか赤也は元気が無かった。

「ジャッカル、赤城さんから何美味しそうなもの貰って食べようとしてるのかなぁ?」

「え、コレ赤也にやる奴の余りでよければって。」

ジャッカルは謂われ無きイビリに晒された。いつも赤也がご迷惑を、と満から言われたがちゃんと言い訳も聞いたのだ。

「キドニーパイか。赤城の好物で得意料理だな。」

「ジャッカルずりぃ!赤城ぐれぇだろマトモな食いもんくれんの!」

ジャッカルが後悔したのは言うまでもないが、赤也からは不問に処された。

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