紅花の咲く景色 | ナノ
奪いたいその座


昼休みはイチャイチャしているか、保健室で読書に耽る満だが。休み時間は稀に呼び出される。
勇者と称えるには、動機が不純だが。
屋上に大人しくついて行く満は、制服にスチール定規やボールペンをいつも仕込む。勿論、万年筆もネクタイ裏に仕込んでリンチ対策にしているのだ。

「切原君と別れて下さい。レギュラーの皆さんに迷惑です。」

「あの、現実的に無理だと思いますけど…。」

先輩か後輩かも判らない女子生徒1人、と言う事で敬意を表しついて行ったが、もう何度も聞かされたお馴染みの台詞だ。

「無理じゃな。赤也は赤城にべた惚れで絶対嫌がるぜよ。」

給水塔の上から顔を出した仁王。満も女子生徒も唖然としている。
満はその気になれば気配を読むが、普段は使わないように気を配っているのだ。何度か体育で不意打ちをしてしまった経験から。

「どこから沸いて来たんですか、仁王先輩。」

「昼寝じゃ。赤城は知らんが赤也は何が何でも、今は別れたがらん。賭けてもよか。」

呆れたように言う満に、中学生とは思えないほど妖艶な笑みを向けて、仁王は女子生徒に楽しげに話した。実際問題、赤也は満に執着して口癖のように別れないと言い続けている。
クラスメートとレギュラーはよく知っている。

「賭けるなんて。仁王先輩は他人事を茶化すのが好きですね。」

「俺は真面目じゃ。赤城に切られとうないぜよ。赤也も騒ぐじゃろ?」

「そうやってレギュラーに媚び売って…!」

談笑する満を憎悪に満ちた目で睨むが、満は慣れているので全く効果が無い。

「媚びるなんてした事ありませんし、私は一応赤也の彼女なんですが。」

「赤也が聞いたら泣きそうじゃのう。赤城、一応はいらんじゃろ。」

茶々を入れる仁王は笑いっぱなしだ。力ですら、女子生徒は満に敵う筈も無い。万年筆で、立海最強と言われてしまうのだから。

「オフレコでお願いします。赤也は拗ねると集中力落ちますから。」

「いつか、絶対別れさせてやるわ変態!!」

そんな事を言われても、名前はおろか学年すら満は知らない相手だ。
逃げるように駆け出した女子生徒を見送り、満は再び仁王を見上げて尋ねた。

「コート上の詐欺師と謳われる、仁王先輩に質問します。赤也と私が仮に別れたとしても、彼女はテニス部に歓迎されると思いますか?」

「解っとる答えじゃな。ミーハーな女子をいちいちマネージャーにするヒマは俺らにはなか。」

お互いに意地の悪い笑みを浮かべ、満は軽い足取りで教室へ戻った。

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