紅花の咲く景色 | ナノ
特技を生かして


数々の血液を味見してきた満だが、理想には未だ出会えていない。そんな異常とも言える嗜好。
丸井の血は甘いと言われたので、食生活とか判るのか?と満に尋ねる事にした。

「なぁ赤城。血の味で甘いとか色々言ってるけど偏食とか判るのか?」

「顕著であれば判ります。仁王先輩は些か食が細いような気がします。好き嫌い多いのでしょうか。」

本気で判るのかよ、と丸井は顔を強ばらせて赤也を凝視した。
満はきょとんとしていて、聞かれたから素直に答えたんだけど、と言わんばかりだ。赤也は少しばかり遠い目をしている。

「赤也、どうして赤城と付き合ってんだ…?」

「満には俺から告ったッスよ…。この妙な特技は知ってるッス。」

「数をこなせば何となく判るわよ?」

長年に渡る、英才教育によって培われた技術。嗜好による特技と一般人からは程遠い位置に存在する。

「やっぱ赤也すげぇな。」

「常々疑問に思っていたのですが、何故私は休日にも拘わらず部活に参加させられているのです?遠征もですが。」

嗜好はともかく、治療は学生とは思えない手腕。的確で速い事を評価されて呼ばれている。

「赤城の治療技術を一年に教えて貰うのと、メントレを兼ねている。」

「俺らはともかく、平は赤城にビビっとるからのぅ。暇そうに見とるじゃろ?アレ結構怖いぜよ。」

「後は赤城がファンクラブを黙らせられるからな。こちらとしては非常に有り難い。」

休憩時間に、会話を聞いていたのか集まるレギュラー達。
平日はキャーキャーと騒がしいファンクラブを、満が笑顔で黙らせる事もある。柳が考案したのだが、めざましい効果を発揮しているのだ。頼むのは今のところ真田だが。

「そんなのべつまくなしに切る趣味なんてありませんけど…まぁ、赤也の役に立てるなら。」

「赤城、ナチュラルに惚気んでくれんか。」

「切原君は好かれていますね。」

「赤城に好かれて喜べるって…ジャッカルも無理だよな。」

「当たり前だ!怖い!」

ただし、赤也に好意を持ち始めた理由が物騒だ。ナックルサーブで流血沙汰を起こす赤目。そして名前。
顔しか見ていないより、切なくて怖い。

「そんな心配しなくても、味見はついでで見る方が私は好きですよ。」

黒歴史に等しいが、満の祖父は昭和の切り裂きジャックと呼ばれた、迷宮入りした事件の真犯人。故人なので裁かれない。しかし幼い満は間近で見せられて、技を盗んだ。
どんな相手ならば味見をしていいのか、叩き込まれている。

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