紅花の咲く景色 | ナノ
医者の一人娘


満の部屋には古今東西の刃物が飾ってある。と赤也から聞いた幸村以外のレギュラーは、怖いもの見たさで満に部屋を見たい、とねだった。
断る理由も無い満は招いたのだが、家と病院が連結している赤城家を見上げた。

「でかっ。どっちが赤城んち?」

「左です。レンガの方ですね。病院は右の白い建物です。」

丸井の素直な感想に満はクスクスと笑い、家へと入った。一般的な住宅二軒分だから、普通に大きいのだ。高さはそうでもない。

「母の部屋は行かない事をお勧めします。私も入りたくないので。こちらが客間で、父の趣味で洋風になっています。台所はこちらです。リビングと繋がっています。二階は私の部屋と父の部屋と簡易図書室で、母の部屋は病院に一番近い部屋にしています。」

「簡易図書室?どんな本があるんだ?」

本好きの柳と柳生が食いつく所だ。赤也は丁寧に説明してんなぁ、としか思っていない。

「無節操ですよ。父の部屋にも私の部屋にも本棚はありますが、足りないのでそこに医学書からファンタジーまで好きな本を置いていますから。」

とりあえず満の部屋に、と案内された三年レギュラーは見事に固まった。
斧、鞘もある刀、槍、薙刀などのコレクションに圧倒されていた。全て、満が手入れをしている。

「凄まじいな…。」

「お恥ずかしい話ですが、無銘の品ばかりです。自慢出来るのは母にねだってオークションで競り落として貰った、フランス製の剣ですね。レプリカだとは思いますけど。」

刃を潰されたものも、蛍光灯で銀に輝く。壁紙は薄紅色で、全体的に赤い部屋。赤也も知らないが、満の机には細工がしてある。そこに祖父母から譲り受けた、愛用の道具一式が仕舞ってあるのだ。無用の長物、と捨てるには何かと後ろ暗いので滅多に出さない。

「これは飾りだけど満は洋服に色々仕込むんで、使う奴は別ッスよ。ハサミとか色々付いてるキーホルダーみたいなのとか。」

「十徳ナイフね?お婆ちゃんから貰ったのと、お母さんから入学祝いに貰ったの二本。小さい方は赤也も見たわよね。」

どんな入学祝いだ、とツッコミたいのは山々だが、異常とも言えるスキルを持つ満の危ない親なのだ。
嗜好や必要に駆られた結果であれ、現代では異常な流血の血統。
満の父は病気で亡くなっているが、勘ぐりたくもなるだろう。

「赤城んちは色んな意味でおっかないナリ。」

「父の部屋は本棚とレコードだけですよ。ベッドは赤也が使いますけど。」

どういう事だ、と真田に2人して説教された。

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