紅花の咲く景色 | ナノ
立海二恐かも


病室にて、満と幸村は初めて会話をした。学年も違えば、幸村はあまり怪我をしないので魔の金曜日に保健室へ行く事も無かったのだ。

「はじめまして、幸村先輩。テニス部の救護要員を務めさせて頂いています、赤城満と申します。」

「はじめまして。幸村精市だ。お花有難う。いい趣味だね。」

嫌味ではなく、掛け値なしに幸村は褒めている。
片や神の子と呼ばれる厳しい部長、片や殺人鬼教育を施された変態と呼ばれる学年首席。営業スマイルで雰囲気は穏やかだが、見ている方は気が気でない。
2人共怒らせたくないタイプだ。

「外面全開だな…。」

2人共、と言わなかっただけ赤也は学習している。満と出掛けた先で、ナイフ技術を何度か間近で見ているのだ。

「だって幸村先輩は詳しい事は知らないでしょ?」

「ううん、知ってるよ。血の好きな変態保健委員でストーカー撃退した赤也の彼女でしょ?大体みんなから聞いた。」

「あら、そこまでご存知でしたか。お加減はいかがです?リハビリを頑張りすぎると体に良くないと母から聞きました。」

「詳しいね。でも大丈夫だよ。ちゃんと決めてるし最近は筋肉痛でね。」

笑いあう2人だが、薄ら寒いものを感じるレギュラー達。赤也は特に、満から放たれる明確な敵意を見た事がある。下手をすれば病室で血の雨が降りかねない危機だと認識していた。

「赤也、赤城を止められるのはお前だけだぞ。」

「柳先輩、私を何だと思っていらっしゃるのですか?こんな所で危ない真似はしませんよ。どれだけ罵られても、事実は変わりませんし虚構であれば否定しますから。」

苦笑混じりに告げられても今までが今までなのだ。柳が調べた情報では、話し合いは実力で黙らせる。独自の組織に近いものを作っている疑い。カミソリレターを送る事は、自分の死刑執行書にサインをするような事。
安心など出来る筈が無いのだ。

「蓮二、問題は無い。いざとなれば全員で押さえ込めばいい。」

「…真田副部長、どんだけ信用してないンスか。満は有言実行ッスよ。」

「まぁ、赤城と幸村君を会わせる目的は達成したし。ケーキ食っていい?」

丸井の明るい話題に、レギュラーはチャンスとばかりに食いついた。全員分のケーキを買っただけある。

「…それに、満キレたら真田副部長だって危ないンスよね。」

「赤也、私はそんな節操なしに見えるのかしら?」

「見えねぇ。でもホントだろ?本気でスポーツさせちゃいけないし。」

聞かなかった事にした三年だった。

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