紅花の咲く景色 | ナノ
処世術?常識の間違い


成績優秀、素行は極めて宜しく、勇気ある女子生徒と教師陣からは素晴らしく高評価の満。
ただし、生徒からは怖がられている。そんな満に、盛大な定番を崩した告白をした赤也。クラスでも、偶然だが隣の席で仲良く話している。

「なぁ満、ここどうすんの?」

ノートと教科書を広げ、数学の図形問題とにらめっこをする赤也。体積と表面積を求める問題だ。

「あぁ、表面積は皮剥いてベローンと広げた展開図で考えると楽だよ。三角錐だから。」

「…言い方がいちいち怖いから止めてくれ。」

クラスメートを代弁するかのように、赤也は呻いた。満は気を抜くとエグい発言をしがちなのだ。精神衛生上、あまり良くない。

「皮剥いて、って奴?そう言えば昨日の急患さんで熱湯腕に掛けちゃった人が居たなぁ。泣き叫んでたけどホント痛そうだった。」

「だからそういう話はしないでくれ!怖いから!本当にあった聞くだけで痛い話だから!」

「解った。気を付けるね。赤也、三角錐の表面積は単に円2つで求められるけど出来そう?」

「おぅ。満の説明解りやすいから。」

「お母さんに説明下手な医者は認めないって言われたから赤也は練習になるんだよね。」

にっこりと笑いながら次の授業の準備をする満。こんな医者イヤだ、とクラスメートはどうしても思ってしまう。
血を好む変態、と完全に満はレッテルが貼られているのだ。

「爺ちゃんも医者だったんだよな。医者の家系?」

「そうだよ。お爺ちゃん達は孤児院もやってた。お爺ちゃんは産婦人科で、お婆ちゃんが外科。お母さんは外科。お父さんは内科。見事な医者一家でしょ?」

「そこだけならな。満の母ちゃん満より怖いし。」

「お母さんは悪趣味だからねぇ。趣味と仕事は別物だけどやりやすい道だから私は外科医目指すの。」

「見るのが好きだしな。願望がヤバすぎてお医者さんになりたい、なんて言われても賛成したくない。」

なら止めろよ!と思わずには居られないクラスメートだが。
満を止めるのは文字通り命懸けなので、他力本願だ。

「せっかく建てた病院、潰したくないから。私が生まれた年に開業したし。」

「へー。でも満の母ちゃん結構年いってたよな。」

「当時は高齢出産だったんだって。だから私しか跡継ぎ居ないんだ。それまでお母さん達は大学病院で働いてたし。」

のんびりしながらペンをくるくると回す満。
開業医は跡継ぎ問題で何かと困るのだ。待望の子供が優秀である事が幸運でもある。
そういう理由で、満は医師を目指すのだ。

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