紅花の咲く景色 | ナノ
何も無ければ
食事を終えるなり、赤也は満を抱き寄せてジャッカルを睨んだ。
名前で呼ばせてやるもんかと嫉妬の炎をぼうぼう燃やしている。
「ジャッカル先輩!満は俺の彼女ッスよ!」
「でもジャッカル先輩って呼ばれ慣れてるんでしょ?ハーフなんだし、名前呼びが当たり前な文化否定しちゃダメよ。」
「なんか仲良そうなのが嫌だ!」
「それじゃ平等に全員名前で呼ぶべき?」
「もっとダメ!満だって俺が勝手に知らない奴から赤也君って呼ばれんの嫌いだって知ってるだろ!?」
至近距離での、可愛い痴話喧嘩。満は全く相手にせず茶化している。
ムキになって嫌だと主張する赤也が可愛いのだ。
「赤也がすげーガキっぽい。んで満がお姉さんみたいな感じ。」
「赤也は元々一途の一直線タイプだからな。満に相当入れ込んでいるし片思い期間も長かった。」
赤也が恋愛相談を長らくしていたので、レギュラーは嫌になるほど知っている。執着し、気に入らなければすぐに文句を言うのだから。
「切原君!交際しているとは言え、女性を堂々と抱き締めるものではありません!」
「柳生の言う通りだ。女子に軽々しく触れるものではない。」
お堅い風紀委員2人がかりでも、満と赤也の痴話喧嘩は止められなかった。
ますますヒートアップしている感が否めない。
「ほら、真田先輩と柳生先輩が怒ってるよ?と言うか先輩に名前の方が呼ばれ慣れてるからって言われたんだから後輩なんだし断れないわよ。」
「ほぼ全員からビビられてる満ならノーと言える日本人になれるだろ!だからダメ!」
「イヤ。」
「満の意地悪!遊んでるだろ!?」
今にも泣きそうな赤也の頬に、満は手を当てて笑いかけた。
一瞬ときめくのは悲しい惚れた弱み。
「今のはちょっと意地悪すぎたかな?ごめんね。」
「ううん…。満が部活見てくれてるの嬉しいし。」
イチャイチャし始めた流血カップルを放置する。それしか三年レギュラーは出来なかった。
赤也はあしらい方を知っているが、満の沸点は判らないのだ。
「…なんか色々悪い。俺が言い出したのがダメだったよな。」
「でも実際ジャッカルってみんな呼んでるからな。満の方が珍しいだろ。」
「何となく満もテニス部に馴染んどるしのう。満を騙す為以外、名前で呼んだら赤也にサーブ当てられそうじゃ。まぁ仲間みたいなもんじゃろ。」
「あのプレッシャーがあって当たり前、と平も思っているらしい。」
怪我しないかなー?と言わんばかりのプレッシャー。かなり、辛い。
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