紅花の咲く景色 | ナノ
朱も逆らえない


赤也の隣で、ジャッカルと丸井が注目する中満は慣れた手つきで弁当を広げた。
2人はあからさまに安堵の息を吐く。想像していたものではなく、普通の弁当。
満の不穏な噂ばかりを聞いていたから、先入観で怖いイメージが出来上がっていたのだ。

「ホントに弁当はフツーなんだな…。」

「桑原先輩、どんな想像をしていたんですか?」

「いや、目玉がゴロゴロしてるとかさ…。」

どんな弁当だ。赤也同じく、丸井の素直な答えに呆れて息を吐いた。
物騒極まりないカップルだが、普通にしてさえいれば無害だ。

「魚の目は美味しいですけどね。健康にもいい、ローカロリーですから。」

そうして始まった昼食。ラーメンさえ早食いが出来る赤也は早々に食べきり、満にべったりとくっついていた。

「人目とか気にしないの?ちゃんと噛んで食べないと消化に悪いわよ。」

「だって満に仁王先輩が触ってたのヤだった。」

「心配しなくても、私は君が好きだからここに来たのよ?」

何この完全な2人の世界。と仁王や丸井は居心地の悪さに気付く。
柳生や真田は既に食事に集中していて、柳はノートを広げると何事かを書き始めた。

「赤也。赤城は保健委員で腕はいいと聞く。部活で手当てをしては貰えんだろうか?」

空気読め!と思い出したかのような真田の発言に固まる三年レギュラー。
しかし、満は目を瞬かせて首を傾げた。赤也は目を輝かせている。

「私ですか?」

「真田副部長!それマジいいんすか!?」

「うむ。手当ての腕は確かなのであれば頼みたいのだが。丸井も怪我が多かった筈だ。」

「確かに丸井はよく怪我をするな。しかし弦一郎、赤城は赤也の彼女だ。いいのか?」

イジメに泣き寝入りするどころか、逆にやり返して泣かせそうな満だ。更に校内では流血する怪我の手当てが大好きな変態扱い。

「マネージャーではなく救護要員として、正式にテニス部に入部する訳でも無かろう。事実、最近は怪我人が多いからな。」

赤也のナックルサーブに当たる部員が多数いるのは事実だ。だが赤也が満に構って貰いたいから、とわざとらしく怪我をする可能性は十二分にある。

「満!お願い!成績いいんだしいいだろ!?」

「まぁ、朝型だからそこまで生活習慣が変わるとは思えないけど…やるなら捻挫はともかく、テニスの知識が無いから勉強しなきゃいけないわね。」

「赤城、初心者向けの本なら俺が持ってるぜ!貸してやるよ!」

やるとは一言も言っていないのに、救護要員に決定してしまった。

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