紅花の咲く景色 | ナノ
朱は糸を引く


翌日、柳が更に突っ込んだ話を満から是非聞きたいとの事で、赤也は珍しく満に昼休みになった途端嘆願した。

「へ?何でまた私が天下のテニス部レギュラーのお昼に誘われるの?」

「俺も正直嫌だ…でも柳先輩が連れて来なかったら解ってるなって!お願い!マジ!」

「ほらほら、赤也君たら泣きそうな顔しないの。」

苦笑しながら赤也の肩を軽く叩く満だが、僅かに目が鋭くなった。
いつもと様子が違うので、更にカマをかける為に名前で呼んでみたのだ。

「タメだよな、俺ら。」

情けなさそうな顔で、赤也が満を見て首を傾げる。子供扱いは嫌だと言わんばかりだ。

「そうじゃなきゃ赤也君が年齢詐称?」

「逆だろ!?」

クスクスと楽しげに笑う満は指を立てて首を傾げた。掛かった。

「だって私ちゃんとお母さんの腹から出て来たもの。証拠もあるわ。」

「言い方がグロいんだよ!エイリアンみてーじゃねーか!」

「私としては遊星からの物体Xがオススメね。」

「話逸れてんじゃん。来てくれるよな?」

「えぇ、喜んで。仁王先輩がご招待して下さっていますから。」

赤也の顔から、表情が消えて目を細められた。満はまだ笑っている。

「…どうして気付いたんじゃ?」

「答えは簡単、赤也君と今初めて呼びました。それとグロいなんて私は使わせません。日本語と英語は区別して覚えさせている筈ですから、おかしいと思うべきですね。彼は嘘が下手ですし、導き出される答えは変装の達人仁王先輩以外存じません。」

笑みに隠れた鋭い牙を仁王は垣間見た。勉強だけの頭でっかちではないのだ。
流血の血筋に義務付けられた過酷な訓練、望んだ学問と併せて完成する跡継ぎへの道。着実に歩むからこそ出来る芸当だ。騙されたフリも可能だろう。

「これは一杯食わされたのう。まぁ、参謀が呼んどったんはホンマじゃ。」

「それでは参りましょうか。お待たせする訳には参りません。」

弁当を持ち、歩き出す満の腰に手を回す仁王。

「詐欺師の修行もまだまだかのう?」

「どうでしょうね。赤也君はこういった事をする人ではありませんよ?」

「手厳しいのう、変態保健委員は。」

「仁王先輩の方が彼とは付き合いが長い筈です。自惚れていいのでしょうか?私にしか見せない顔がある、と。」

穏やかに笑いながら、軽口を叩いて屋上へと向かう仁王と満。
腰に回した手を見て、赤也が凄まじい嫉妬で満にべったり張り付くようになったのだった。

「満!俺以外触らせんなよ!?」

「体育はどうするのよ?」

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