オールバックな木手君 | ナノ
天変地異の前触れか
バレンタインネタです。
放課後、校門前のデッドヒートが名物のお嬢様学校らしからぬ攻防が何故か、起きなかった。
木手は天変地異の前触れか?とすら疑っていたが素直に車に乗る霧栄を不躾にならない程度に観察していた。霧栄のカバンはパンパンになっている。
所謂友チョコだ。男相手に躊躇う事無く、足払いだの飛び蹴りだのを平然とかます前代未聞のお嬢様。箱入りお嬢様には最初は野蛮だ粗野だと言われていたが…日常的に行われていると何故か見てしまうし、無駄の無い動きに見惚れてしまうのも無理はない。
加えて相手が木手。美しい動きのイケメン執事と霧栄の戦いは年中行事にすらなっていた。
「はい、えーちゃんにバレンタインチョコ。」
霧栄が差し出したのは―カバンに詰め込まれた殆どのチョコだった。自分の分は既に学校で食べていた。
「私に、ですか?」
「うん。三年のお姉様方から後輩のかわいこちゃんまで。ザッと見た感じゴディバが多かったかな。」
片眉を上げた木手だが受け取らなければ非礼になり、霧栄の評判がただでさえ低いのにマイナスになると判断して礼を言って受け取った。…後日丁重に礼状と相応の品を用意しなければならないと些か憂鬱になる木手。
「私からは、はい。」
チロルチョコ一粒。
「…確かに期待は全くちっともさっぱり全然欠片も微塵もしておりませんでしたが…渡すならば相応の品にするべきでは?」
それに霧栄は眉を顰めた。
「知らないのー!?コレまだ非売品のレアだよー!?てか私が食べ物、ましてや甘いもの未だかつてあげた事無いでしょー!?」
「おっしゃる通りで御座います。」
そうだった。このお嬢様はやたらと甘いものが大好きで、沖縄武術を教えた後はやって来た頃とは格段に増えたが寧ろ体は痩せた。と木手は思い直す。
「え、それとも何?携帯小説みたいにリボン巻いてプレゼントは私とかそんな展開!?」
「…お嬢様。それは年齢制限があるのでは…」
額を押さえながら木手が呟くと霧栄はあっさりと
「少女マンガよりマシだよ?結構えっちぃし。セリフもクサいし。」
どこからそんな情報を…と言いかけて木手は口を閉ざした。隙あらばコンビニで立ち読みする霧栄だから。
「…珍しいですし有り難く頂戴します。」
今回の木手くん。
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