ゴジラの子供達 | ナノ
関東最強の結婚式


二十歳にして、遼の父親と挨拶を交わし、半ばもぎ取るように学生結婚まで漕ぎ着けた手塚だが。とことん報われなかった。
晴れ着は遼があまりに大きすぎて苦労の連続、更に遼の知人が山ほど居るものだから、式場の手配なども跡部が見かねた。

「すんまっせーん、シャンパン追加」

「飲み屋と同レベルで酒を頼むな…!」

ザルの遼と、あまり慣れていない手塚では違いすぎたのだ。隙を見ては捨てているのだが、総理大臣だの警視総監だの芸能人だのと名代や本人がわんさか遼へと群がる大惨事。
二度とやりたくないと思うのは普通だろう。庶民的なかつてのテニス部員達も、遼の周りがどれだけ恐ろしいものだったのかと顔が引きつる結婚式だった。
遼は経済学部で適当に講義を受けながら父親を継ぐ気満々、手塚はテニスをする傍ら法学部の模範生。昔から知らなければ異色の夫婦だ。
2人揃ってタキシードを着た時は、女性の黄色い声が式場に響き渡った。

「遼、お疲れさん。」

「おぅ。1ヶ月分飲んだ気がするぜ。」

三次会にて、やっと静かに語れる場になったが。遼は着替えだ化粧だと疲れている事が解りきっていた。
手塚はそれ以上に疲れたが宿命である。そんな結婚式を終え、名字は手塚となった遼だが。手塚家に引っ越しても付き合いがある。
辞めたと言っても、過去の情報はまだ健在。売ってくれと言う者はいるのだ。以上の理由で、名実ともに夫婦となるまで手塚はかなりの忍耐を要した。
更には、真田と蓮のできちゃったで忙しくもあった。

「遼、熱でもあるのか?」

「あ?いや最近風邪気味ってだけ。」

体が怠い、と言いながら料理を続ける妻はあまりにも規格外の体力。うつされても二、三日で治るが長期化している事に気付けない筈は無い。

「病院に行って調べて貰った方がいい。珍しく長引いている。」

「んー。解った。」

身に覚えがかなりある手塚は、疑わなかった。第一、彩菜が示唆していたのだ。月のものが止まっているようだ、と。
中学高校と、次第に男達から恐怖の混じった熱い視線を送られても靡くどころか襲い掛かられる心配すら要らない。

「…へ?今、なんて?」

「いや、俺も妊娠した。3ヶ月だってさ。体怠い訳だ。」

肝心要の手塚より、数ヶ月先輩のレイナに報告をしていた。尤も、ちゃんと手塚にも伝えてはいた。
生理が無い事と倦怠感以外は、全く変わらないので妙だと思いながら何もしなかったのだ。後にこってりレイナと彩菜から妊婦の心得を語られていた。

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