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まともな理系バカ


まなみ様リクエスト
良識ある知識人

ある朝。まず真っ先に忍足が自分の目を疑った。
長すぎて不気味な事この上ない髪は、几帳面に二つの三つ編みにされて更に纏められている。仕事も相変わらず有能。

「おはよう、侑士君。」

柔らかな笑みを浮かべ、颯爽とマネージャー業に励む香奈。さしもの跡部も、二分ばかり思考回路がフリーズしてしまった。

「香奈、だよな?」

「はい、信濃香奈です。岳人君、人相で個体識別は難しい?」

理系のぶっちぎり加減も異常無し。だが、ハキハキとした受け答えにどこか違和感を覚える。

「…来れる奴全員呼ぼうぜ跡部。」

宍戸の提案に、学校なんざくそくらえだ!こっちの方が世界に関わる一大事!とゲームさながらの思考で立海、青学が集まった。ルドルフ、六角と不動峰は学校行事終了後にやって来る手筈。

「見た目からまず違和感バリバリなんすけど。何かやらせたんすか?」

「朝からコレだ。」

「切原君、景吾君。私は肉体に異変は察知してないけど、何か見て解るの?」

お前のその態度が、いつもと違いすぎて変なんだよ。と言いたいのは山々だが、まともな会話が成立すると言う奇跡だ。
一部は神に感謝すらしている。

「香奈、俺の名前は覚えてる?」

「はい。幸村精市君、私のクランケだった。体調はどう?」

覚えてた!とある意味失礼だが凄まじい感動。クランケ、患者であった幸村は異能を狙われる立場だが、その気配すら無い。

「香奈先輩、昨日、何を作って飲みました?」

「昨日は市販されている牛乳を、84℃まで温めたものを。」

何か妙なものを飲んで、この異変が起きたのではないか。
乾汁被害者、海堂が身を以て知る恐怖。疑うべきだと経験が叫んだが、それ以前からおかしい。

「何か、変わったものとか作らなかった?」

「えっと…私設の研究所で全ての元素を混ぜる為に実験をしていたけど、途中で一時気を失っていたみたい。」

「それです!」

大石の質問に、出来るだけ分かり易い言葉を選びながら言う香奈に、柳生が声高に断言した。

「…?錬金術にはならないよ?」

「は?錬金術?」

「ジャッカル、世界史の錬金術だ。漫画ではない。理系に関しては変化なし。いい事だ。」

香奈は首を傾げ、ただ不思議そうに香奈専用部室でお茶を飲むメンバーを眺めている。

「香奈、ブラは着けとるか?」

仁王の質問に、香奈は顔を真っ赤にして睨んだ。その反応すら、新鮮。

「仁王君!女に向かってそんな事聞かないで下さい!下品です!」

「…信濃が、まともだ。」

手塚のこの一言に尽きる事件だが、一日中人間性を確認された香奈は翌日、逆戻りしてメンバーに一瞬だけ夢を見せたか化かしたような事となった。

まなみ様リクエスト、まともな理系バカ。単に落ち着かない青少年達となりました。いつも全力で振り回す人がまとも、という一発ギャグです。連載にしたら果てしなく長い優しい解説を初心者に解るように、となるので伊藤は書けません。だってそういうもんだ、としか覚えてないんだもん専門知識。

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