戦国婆娑羅 | ナノ
葉桜もまた桜
喀血が減ったと言っても、無くなった訳ではない。とどのつまり、また布団を血染めにしてくれやがりましたよサド知将。
「…完全に肺がやられたかな。」
呼吸器系と胃腸系は一目瞭然で色が違う。どちらも見た私はどんだけハードな人生歩んでんだろ。
漂白剤が欲しいな。
「卿は奇妙な娘だ。私よりも遥かに幼いが、私の考えを理解しているようにも見え、していないようにも見える。」
布を洗いながら、今は亡き義理の父松永さんの事を思い出した。
こちらに来て、真っ先に出会った。フラグ立って回収を覚悟したよ。
携帯に興味を示して、基本理科のお話。詳しくは知らないけどそれでも面白い、なんて言ってた。むちゃくちゃいい声で。
「思うは自由、話すも自由な立場だから気に入られたのかな。」
程良く愚か。程良く賢く。松永さんは思い切り見抜いてそうだったけど、お互い様。
骨董品の知識とかお茶の作法とか泣けるくらいビシバシ叩き込まれた挙げ句、半兵衛に見せ物扱いで豊臣にゴー。風呂とか月の障りとか半兵衛と一緒にあれこれ考えたよ。
「あ。今更ながらに殺意が沸いてきた。」
衣食住に加え戦国知識、更に本能寺で拾った光秀の初期武器、鎌の扱いもマメが出来て手の皮が剥けるまでとか鬼か。優しいと一瞬でも思った私が馬鹿だったけどさ。
「世にも珍しき鶯の声を愛でる、その声を奪うも壊すも私の自由。」
単に流行った歌が珍しいんだから運がいい。
松永さんは諸行無常を知ってて、ベクトル間違ってんだよね。解るけど。
さぞかし現代じゃ飽き飽きすんでしょ。
「茅乃、卿を見たいと言う奇特な者がいる。」
懐かしいけどやっぱりムカつくな。哲学は楽しかったけど。
「…涅槃に宝はあるのかな?松永さん。」
布を叩きながら、空を仰いで呟いた。独眼竜の象徴たる、透き通るような蒼。海のそれとは違う。
現代の空がとんでもなく汚い事も理解した。ただし夜は足元注意。
「茅乃様!半兵衛様がお呼びで御座います!」
「すぐに参ります。」
干すのは頼んだ、と女中の女の子に返事をして半兵衛のとこに。…何かあった?呼んでたから死んでないでしょ?
「茅乃君。これはどういう事かな?」
…どういう事って。単に私の権限でやっていいって言質取った事です。
カタカナを忍びの皆さんに教えて暗号化しましたー。バサラクォリティは使いましょう。ってそんだけ。
「支障がありましたか?」
「あるから言っているんだよ。君はまだ元服前の子供なんだから。」
そうでした。慣れって怖いですね半兵衛様。
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