戦国婆娑羅 | ナノ

西軍好き娘


自重しきれなかったバサラネタです。

現代に居た筈なのに目が覚めたら、大阪湾の岸に辿り着いていたらしい私は何の因果か大谷様と三成様の侍女から始まり、侍女頭まで上り詰めた。だが、三成様達は関ヶ原にて敗戦し、重用されていたと誰もが口を揃えて言ってくれたもんだから。
江戸城に半ば強制連行。
侍女頭としての務めをやらされるかと思えば…人質だった。

「お聞きしたいのですが、何故私は見えなくなってしまったのでしょう?」

三成様を裏切った巫女。
裏切りを最も憎み、自分すらも憎んだ三成様のお心を知ろうともせず、周りの声と自らの下らない恋に走った巫女は、一切の閃きを失っていた。…戦神ならいざ知らず、海神の声をただ伝えるだけの道具。
代わりはいくらでもいるのだろう。

「穢れは神の嫌うものなれば致し方なき事かと。それすらも姫御前は予見出来ないのですか?」

絢爛豪華な部屋に、溢れんばかりの調度品。使わない物ばかりが集まる虚飾の牢獄には、三成様の怨敵家康までもがやって来る。
殆ど彼らが勝手に話をするだけで、私から話す事は何一つとして無い。
涙すら忘れた。痛みに慣れた。昼すら戸を閉め、夜を待つだけのお人形。
短気な誰かが勢い任せに私を殺せば、今まで黙っていた西軍の残党が立ち上がるだろう。…影の軍師、と雑賀の何とかが調べ上げたらしい。
狂わない限り、何も感じないように本能が働いたのかも。

「わ、私は私の海を守る使命があったんです!」

「私には神の御声を聞く術がありませぬ。神が海を守れと姫御前に望まれたのでしょうか。」

私の海、なんて馬鹿馬鹿しい。所有物になりはしないものを奪い合い、命を落とす事の虚しさも鶴姫は知らないのか。
三成様はあまりにも正直で不器用なお方だった。ただひたすらに秀吉様を崇め、そのために命を散らせた悲しい人。同時に可愛い人だった。

「乱があると、お告げがあったから…。」

「その乱を治めるべく、姫御前が乱を招いたと言えましょう。」

「宵闇の羽の方と、私が運命の出会いを果たせたのはお導きです!」

「巫は純潔を守らぬのでしたか。浅はかな知識を露呈し、お恥ずかしい限りに御座います。」

深々と謝罪の言葉を添えて礼をする。誠意が無いのは三成様への裏切りが私も許せないから。馬鹿な女の意地の張り合い。
鶴姫は、泣きながら立ち去った。
そして今宵も、空を見上げて眠くなるまで過ごす。
あいつ一体何歳だ。温室育ちにも程があるだろ。日本の神様は、荒ぶる時もあるのだから。
…そういや大宰府天満宮ってあるんだっけ?確か平安時代の人だったよね?

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