戦国婆娑羅 | ナノ

つられて咲くか


半兵衛様の病が悪化した。無論、示唆だけは私もしたけれど止めなかった。
半兵衛様の夢を、一分一秒でも長く秀吉様のお側で見たいと願われたから。

「…茅乃君。今は?」

「辰の刻になったばかりで御座います。」

野草の知識(主に毒)を三好さん達から習っていたから現代の医療には程遠くとも延命は可能。
結核菌、だから抗菌作用のある野草から二度と飲みたくないお茶が出来ます。ツベルクリン侮り難し。

「これを気休めと君は言うけれど、喀血は減っているね。」

「気休めですから。悪化すれば量を増やすか別の薬を探さなければなりません。ご存命の内に見つかるかの保障はありません。」

「君のその正直さが僕は好きだよ。今まで戦場で喀血せずに済んだのは、茅乃君の知識が役立った。」

まだ寝たきりでは無いにせよ、半兵衛様は痛々しい程に痩せた。
それでも尚、私に内政を。万一に備え軍師としての知識を。生き抜く為の技を惜しまず教えてくれる。
私が豊臣以外で兵になる可能性はほぼ無い。一応の身元引受人、松永さんはもう居ない。更に女である事は半兵衛様と秀吉様だけしか知らない。

「茅乃君。秀吉に遺書を送らせたよ。君の事も。」

「嫌な予感がしますので、打てる手は全て打ちましたが独自に動きます。」

「…君の異国の歌に、あっただろう?満開の花の下に葬って欲しい。」

「お望みとあらば。」

そうして、半兵衛様は漢方胃腸薬なんて甘い!と思うような茶を飲みながら私の歌を聴くのだ。
現に見れぬ夢など見たくない、つまり女の嫉妬系か琵琶湖の中心で友を叫ぶタイプが好きみたい。秀吉様は世界を越える系。
よく解るチョイスだけどメロディーが…。歌詞重視だからこの方々。

「…っふ…。」

一気飲みしてから聴いてるのが半兵衛式。だいぶ呼吸器系がピンチになってきてるなぁ。喘息みたい。

「茅乃はお傍に居ります。どうぞごゆっくりお休み下さいませ。」

私より少し冷たい手。軽く握ったら離してくれなくなった。
…あの。アンタの代わりに仕事あるんですがデスクワーク。傍にいるけど仕事するよ。小田原からどんだけ立て直しと内政整備で、涙目になりかけたと思ってんの?
雑賀はきっちり払ったけど逆らわず従わずはまだいるんだから!


狸寝入りをしている間も、この無垢で残酷な狐憑きは忠実に居てくれる。僕がすべき仕事の多くをこなしながら、僕の世話まで。
子の1人や2人居てもおかしくないのに、秀吉と僕には逆らわず見ている。
狂い咲きの桜。僕と言う花すら狂わせる、美しい声の鶯。

散るまで君は僕の枝で歌うように。
後は、秘密だ。

自重出来なかったPART2。タイトル募集します。もしかすると連載になるかもしれないですハイ。

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