戦国婆娑羅 | ナノ

花に風


戦に向かう三成達を見送ったところで、茅乃の仕事は減る筈が無い。
来る日も来る日も、領地の管理や気象条件による石高予測の総合管理と休みが無い。

「…誰か労働基準法の分かり易い説明で三成を説得してくれ〜。リストラって何の略だよ…。」

一息吐いて、寝心地のあまり宜しくない布団へと突っ伏していた。今思うのは、大将の立場を空高く放り投げて、単騎突入しかねない三成の事。

「織田の残党…ねぇ…。何か違うんだけど。」

茅乃が遠い記憶を辿り、教科書の文を断片的に思い出しても、三成と信長の関係など見いだせない。
家康と三成は関ヶ原の戦いしか思い出せない。茅乃が戦に行かない、と聞いて寄らば斬る、と言わんばかりの態度を隠さない三成に違和感を覚えるな、と言われても無茶だ。

「…三成様、死なないで下さい。」

小さく呟いて、布団に顔を埋めた。
茅乃の生活、政治基盤は三成の存在一つにかかっている。どれだけ善政を布こうとも平和な現代が基準、甘いと半兵衛には散々叱咤された。

「毛利、徳川、石田。徳川にはかなり持ってかれたし兵士募集とか意味無さそうだし。」

布団にのの字を書き出した茅乃だが、間違いではないのだ。家康は、人望と忠勝の存在が凄まじい。そんな考えをしていると、忍びからの書簡が静かに置かれていた。
飛び起きて見れば、中立を維持する前田が姉小路に進軍。また茅乃は頭を抱えてしまった。

「…三成の性格上、中立なんて甘い事ぬかした前田は侵攻するけど。読まれるのは仕方ないか。」

三成の性質を知っていれば簡単だ。0か100か、と言いかねない。
茅乃はそのまま、早馬で大谷への書状を書こうとした。

「茅乃様!!三成様がお戻りで御座います!」

「は!?いっしゅうか…7日前に出陣なさったばかりでしょう!?」

何も支度してないよ!と侍女を呼び、慌てふためいて支度をした。茅乃は、三成の進軍速度を甘く見すぎている。
支度を終え、出迎えに向かおうとした茅乃が襖を開けると。具足のままの三成が立っていた。思わず、茅乃は引きつった笑みで礼をする。

「お帰りなさいませ、三成様。出遅れました事、お詫び申し上げます。」

「今戻った。刑部が人形を手に入れたと貴様に伝えろと言われただけだ。別に出迎えなど要らん。」

アンタはそうでしょうが、体面とか体裁とか世間体とかあるんです。とは茅乃は言わなかった。
とりあえず生きていてくれて良かった、と力が抜けそうなのだ。
人形って何、大谷そう言う趣味?と思うまで暫く時間がかかった。

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