戦国婆娑羅 | ナノ
柳の鞭でぶちましょか
足の傷が癒えて、もう動き回ってもオッケー!と言われた私が、真っ先にしたのは。
鎌振り回して筋肉痛覚悟でした。近代医学甘く見てたよ…解体新書凄かったんだね。
ちなみに、ただでさえ重い鎌は鉄の鞘みたいな?で覆って切れない上に、重さ二割り増し。前の持ち主は二本振り回したって聞いたけど…腕力すごいわ。
「茅乃。そう焦るな。また三成に睨まれるぞ。」
汗だくになりながら振り回してたら、大谷が。帰ってきたんだ。
「鍛錬も己が務めと思えばこそ。首尾はよろしゅう御座いましたか。」
「まぁな。暗、巫、西海の鬼が騒いでおったわ。」
あくまでしらを切るつもりね。長曾我部が戻るなり、伊予の巫女さんが騒ぎ出したらしいけど。
凶王の異名を与えられる程に、変わってしまった三成。それさえも受け入れる従順な妻としてしか、私はここに居られない。
利用価値の無い人は斬り捨て御免だから。
「風の噂では、北条の忍が居たとか居なかったとか。遥々瀬戸海まで何を調べるのやら。」
「それはわれも知らぬな。存外兵の噂は流れが早い。他には?」
「いいえ。四国の再興が進み、近隣から材料を仕入れているぐらいで動きは存じません。」
一応内政管理者だからね、物流はすぐ解る。何をするかは推測の域を出ない。
おしゃべりも程ほどに、鎌を振り回す。帰る為に生き残らなければ。三成の目的へ行けばきっと帰られる。大きく振りかざして、一瞬で軽くなった。
…嫌な予感しかしない。大谷逃げてやがるし。
「馬鹿か貴様は。傷を広げたいのか。」
何なら私が広げてやろうかと言わんばかりの、超おっかない立場上私の旦那様入りまーす。
治ったのに!お医者さんにいいって言われたのに酷い!振り向けば鎌と刀片手に睨んでる。細いクセに力持ちめ。
「傷は癒えました。お心遣い有り難う御座います。一刻も早く、戦に備えるが務めと。」
見せても良いんだけど一応真っ昼間。ついでに兵もいるからはしたないんだってさ。
アラサーの生足なんて楽しくないよ。痛々しい言葉だけど。
「ならば見せろ茅乃。来い。」
ブッコミやがりましたこの空気読めないダーリン。
うん、色んな意味で正直すぎて半兵衛さんが不安がった訳だ。汗だくの嫁の足見たいんですか違いますよね。だって隠蔽工作何もしてないもん。
不仲説は私が叩き割ってるけど。
「はい。」
こうなった三成は、大谷すら止めにくい。いやあんまり止めてるとこ見た事無いけど。一室で、傷痕生々しい足を見せた。
「私を裏切るな。死ぬなど以ての外だ。」
私にすら何度も命令する三成が、時たまとても可愛く見える。罪悪感もついでに来る。
私はあなた無しで生きられない。妻なのだから。
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