新プリfeurig | ナノ
ユウガオ

「おいおい…こんな乳臭ぇガキ共と俺達が入れ替わるってのかよ!?やなこった。試合だ…テニスで決着つけようや。おい、そこのメガネどうだ?……どいつでもいいから早くコートに…!」

「お手柔らかに。」

不満たらたらの佐々部に対し、くるくると手のラケットを回し、穏やかな笑みを浮かべた満が稀に使用するメガネを掛けて立った。
完全に不機嫌ではない事に赤也と鈴以外の事情通が、一斉に安堵の息を吐く。

「ガキはすっこんでろ!怪我すんぞ!」

「おい佐々部…俺に任せろよ。」

面長にハンチングを被った高校生が、コートへと乱入した。
満に比較すると、体つきは遥かに良い。だが訓練は満が圧倒的に上を行くのだ。

[成る程…怪我させるワケかい]

「松平っ!女の子相手だ多少手ェ抜いてやれや!」

軽くジャンプをして、体を慣らす満を見ながら高校生達が野次を飛ばす。残念ながら、スコートではなくジャージだが。

「あいにく手の抜き方を俺は知らない。マグナムっ!!」

高らかに叫びながら、松平がサーブを繰り出した。満は軽く頭だけを引き、前髪が風に軽く揺れる。

「ああ〜っ惜しい!松平のマグナムサーブ!ガンガン当ててけ!」

更にサーブを繰り出した松平だが、こんなものはコマ送りどころか超スロー再生で満には見える。
意図もたやすく打ち返し、腕をだらりと伸ばした。

「ほうマグナムを返すとはな。少しは楽しめそうだっ!」

「そんな時間はどこにもありません。」

柔らかな笑顔のまま、満は松平の顔にボールを当ててのけた。
口の中を切ったのか、松平の顔には赤が伝い落ちる。満の愛する、鮮やかな赤。

「どうかなさいましたか?その程度、擦りむいたくらいでしょう?」

ツイスト回転を掛けた返球に高校生達が固まる。リョーマだけが使える訳では無い。
満程の、プロを名乗れる暗殺者にとっては児戯に等しい。

「お前…っ!」

「勝てば官軍負ければ賊軍…そういう世界でしょう?あなたの世界観は。」

ボールを地面に叩きつけ、満は笑みを深くした。キリキリと、指先の力を込めてサーブを繰り出す。

[こ、これは俺のマグナムサーブ!?]

だが、手を抜いた満。女の子の力で、伸せると判断しなかった。
松平もプライド以外は致命打ではない。怒りも露わに満へ掴み掛かった。

「高校生!止めろ!アンタが危ない!」

「クソアマ!」

満の腕が見える範囲で上がった。
その手には、陽光に輝く万年筆。松平の左腕は一瞬遅れて痛みを訴えた。ジャージがすっぱりと切られ、一本の線から滲む。

「放して下さい。汚らしい。」

「な…!?」

高校生達には、何があったのか解らなかった。

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