新プリfeurig | ナノ
エノコログサ

ひょい、と手を挙げた越前が意味ありげな、意地の悪い笑みを浮かべた。

「越前リョーマ行きまーす。アメリカ行く前で、ウチの中でなんスけど…誰もいないはずの部屋で物音がしたり、人が居ないのに風呂のドアが開いたりするんス。」

「な、何やそれコシマエ…。」

遠山が、明らかに怖がっていますと態度に示す。しかし越前は話を続ける。

「それに家具の位置が変わってたり、なんかよくわかんない声が聞こえる時もあるッスよ。」

「…越前んちってそんなんだったか?」

桃城が真剣な顔で考え込んでしまった。何か曰く付きの噂も聞いた覚えがない。と言うか、寺なのにそんな事があるとは中学生には思いにくい。

「ま、一年も俺は住んでないッスよ?答えは簡単、ウチの猫。カルピンがやったんス。人間じゃない、って奴。」

海堂、向日は明らかに力を抜いた。真面目に聞いたらいけない微妙な怪談シリーズ状態だ。

「あー納得。お前猫飼ってたな。」

「猫が風呂のドアをどうやって開けるんだが?」

桃城は軽く頷いたが、甲斐が首を傾げた。

「横開きだと、爪に引っ掛けて開くわね。後は背伸びみたいにして取っ手を引っ掛けて、体重で押すタイプのドアも。猫の仕業やなんて可愛いわぁ。」

「と言うか…全部オチがある実話ばっかりだな。」

東方のごもっともな呟きが響いた。家具の位置が変わる、と言ってもゲーム機やゴミ箱が移動する程度だ。多少曖昧にした方が楽しい怖い話。

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