新プリfeurig | ナノ
ゲッカビジン

負け組はと言うと、崖を登らされたり鷹に追われたりと、散々な目に遭っていたが体力や気力は充分な中学生である。
慣れれば夜にこっそり集まって、話をする余裕も生まれるものだ。

「んじゃ俺からじゃな。高校生に万年筆使った女がいるじゃろ?赤城満って二年なんじゃが…血が大好きな変態保健委員って立海じゃ有名ぜよ。ニュースになった万年筆の立海女子生徒は赤城ナリ。」

何を話すかと思えば、怪談話。しかも仁王は生身の人間、よりによって満。知っている者は顔を強ばらせ、手を力いっぱい握った。

「赤也の彼女でもあるんじゃがな。手当ての時に傷口から出とる血を舐めるんも変態呼ばわりされる理由ぜよ。俺が見たんは…赤城がナイフ片手に、手の甲に付いた赤い液体をベロリと舐めて。美味しい、と笑ったんじゃ…。」

「に、仁王。それは…。」

桃城、海堂は勿論。軽く事情を説明された、比嘉や四天宝寺も顔色が悪い。
大石すら言葉が続かない。

「オチ付きじゃ。確かに赤城は万年筆以上でもスパスパ切るんじゃ。氷帝は見たじゃろ?メモ紙一枚でボールペン両断するくらいじゃき。」

「仁王ー!怖い!マジ怖いそれ!」

向日が悲鳴を上げて樺地にくっ付いた。単に傍に居たからで、誰でもくっ付いただろう。それだけ、満を恐れているのだ。

「で、オチは。赤城は料理好きでのぅ、自分でケチャップ作って弁当に入れとったんがハネて手の甲に付いたのを舐めただけじゃ。なかなか面白いじゃろ?」

悪戯っぽく笑う仁王だが、話し方に臨場感がありすぎた。

「…こないだの昼飯か。」

「お、ジャッカル覚えとったんか。ネタバレされんで良かったナリ。」

そんな事もあったなぁ、で済むのが立海である。

「何だ…現場を見たのかと期待したのに。」

怪談大好き、と言ってもいい日吉が残念そうに呟く。一応、河村と海堂は満の凄まじい姿を見た事があるのだが。

「赤城なら、不審者を文字通り血祭りに上げた事件があるぞ。」

「すいません柳さんそんだけは勘弁して下さい。」

裕太が真っ先に音を上げると、仁王は少し考え込むような仕草をして言った。

「スチール定規、ボールペン、シャーペン、身近な文房具で普通にお手軽かつスピーディーな殺傷事件やれるんじゃ、赤城は。」

嫌がらせ以外の何物でも無いのだが、テニスじゃなくても勝てそうな気がしない負け組の中学生だった。
柳は囲碁も五分の戦いを行うが。

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