新プリfeurig | ナノ
ムラサキケマン
徳川を前に、満は笑みを浮かべたままだ。今までの中学生と同格には見れない。徳川は確信した。
「…一度だけでいい。本気の君を見たい。」
「一度きりならば。」
満の口が深い笑みに変わった瞬間。
誰もが言葉を失った。
手足が冷たくなり、震えが止まらない。それほどに大きな、プレッシャー。
真田の黒いオーラなど、チャチな子供騙しにすら思える。満が頑として、押し通してまで隠し続けた流血の闇は大きすぎた。
見せたくない、と言い続けた理由がそこにある。
息も、瞬きすらも躊躇われる圧倒的な闇。体が固くなる事を、誰も止められなかった。
その冷ややかな闇を色で示す目を見れば、心すら凍てつく。
DNA、本能、細胞、体のあらゆる全てが叫ぶ。
勝てる相手ではない。強いと言える次元ですら、ないのだ。
この自分は生きる世界そのものが違うと、満は声に出さず伝えている。
逃げ道を示す、慈悲深い死の女神。
「殺す気は無い。だが…殺す気で来ないならば去れ。我が偉大なる母の血に於いて。私の闇を砕けるのならば。」
声音すら冷たい。それでも満は、優しく退却を促したのだ。
自らの孤独と引き換えに、己のおぞましさを教えたのだった。
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