新プリfeurig | ナノ
ハエトリグサ

中学生達による、潰し合いを満達は練習しながら観戦していた。

「…仁王先輩が怪我?この匂いは違う。」

クス、と笑いながら与えられたメニューをこなしていく。金太郎に負けず劣らずやんちゃな小学生だった満にしてみれば、生命の危機に幾度となく晒されない練習は遊びだ。
幾多の赤と物言わぬ人々を見て、生み出す者の技を盗む。

「満ちゃん、蓮二さんは大丈夫でしょうか。」

「相手が赤也でしょう?実力では柳先輩が上。赤也と合宿、難しいかな。」

この2人にはあまり意味が無い、ランニング。全速力で満も鈴も走らない。いや走れない。
満が判断した、ほどほどのポジションで走る。先程の赤い水溜まりを見た高校生達は、私語を怖くて注意出来ないのだ。

「でも赤也君は部長ですし…蓮二さんが棄権、なんて…。」

「それは否定出来ません。王座奪還を目指す、来年の目玉は赤也でしょう。」

それに、と満は目を細めて呟いた。

「五番コートの鬼さん、三番コートの入江さん、そして一番コートの徳川さん。その背後に立つ一軍。敗者切り捨てと言うには予算の関係上間違いなく、何か裏があります。」

何の為のメンタルコーチかと、満は問いたくなる。自らを見つめ直し、極限にまで追い詰められた過去があるからだ。

「メンタルコーチ…だもんね。何をどうするのかも判んないけど。」

「叩き上げるならば、プライドを根こそぎ砕きそこから新たな活路を見出させる荒療治があります。ですが…国の代表を選ぶ為にわざわざ私達を、無関係の私達を呼んでまで何がしたいのか。荒療治は失敗すれば新芽を枯らします。」

満の意見は至極まともだ。医者の一人娘、立海二年生学年主席。
華々しい経歴の下に、幾多の犠牲を踏みつけながら立つ。その中で潰えた芽を見た事もある。

「女子じゃなく、男子に呼ばれたもんね。常識なら女子に呼ぶでしょ。」

「お互いに非常識、とも言えますが…ん?」

満の地獄耳に、中学生達とは違う方向からボールの音と叫び声が聞こえた。

「満ちゃん?」

「あのチビも…?越前君と先程の遠山君…?」

「え?潰し合いじゃなかったっけ?」

不思議そうに、2人は顔を見合わせて首を傾げた。練習に集中しろ、とは誰も言えないままだ。

「鈴先輩には及ばないもののかなりの怪力を持つ、遠山君…。手首と聞こえましたから鬼さんですかね。どうなる事やら。」

「満ちゃんと相性悪い相手だもんね。私と満ちゃん正反対だし。」

いやどっちも危険人物じゃん。と周囲の高校生達の心が一つになっていた。

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