ゴミ箱 | ナノ

これは悲恋?



あの人と出会い、別れた日から2ヶ月も経った。二度と会えない、強弱を兼ね備えた人。
あの人は、空を見上げる事が好きだった。届かない、汚そうと思っても汚れない空が好きだと。
あの人の歌は、声は、小さな手は、鮮明に覚えているのに…もう、会えない。余所行きの柔らかな笑顔と声音が偽りだと、あの人の家族が教えてくれた。
諦めたいのに、諦められない矛盾に苦しんでいた。

「…どこでなら、会えるんだよ。」

あの人は、自分の過去を何一つ教えてくれなかった。年も、解らないままだ。年上だろう、としか思っていなかった。誕生日も、何も知らない。
事故で2日入院していた間の、優しい夢にしては…生々しすぎた。忘れなさい、なんて言われたけど。
忘れられるか!俺の話は散々聞いたクセに、自分はだんまりなんて許せない。
会いたい。…あの優しくも悲しい人に、会って話がしたい。

「…最後まで、ズルい人だ。アンタは。」

あの人が、最後まで言わせてくれなかった事を伝えたい。二度と会えないとあの人は言ったが、俺は諦めない。
余裕綽々なアンタを、慌てさせてやる。

その町は、いや世界は…俺達が作られていた世界。なら、逆もあるかもしれないと少しだけ、期待もしている。だから、俺は下剋上し続ける。
あの人に俺の声が届くその日まで。

逆トリシチュエーション日吉視点でした。時間軸はムチャクチャなので連載は無理です。

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