ゴミ箱 | ナノ

陽光遮る城


新ジャンルで別な話、探偵モノパロディとか案に出されてましたけど伊藤はトリックを考える脳みそが無いので。
ダークファンタジーをちょっと。元ネタはタラスタロスの庭。
引きこもりオタクはサイエンティストやがな、と関西弁じゃないのに出てしまった。

彼女は飽いていた。何千何万もの生死を見続け、ただ流れ行く水を眺めていた。故に、ほんの気紛れに彼女の心を惹いた男と契約を交わした。その国に住まう男の心を惹いた者へ、男と同様の守りを。

「…お願いしますよ、マリカレス。」

「あい解った。無欲な子供だこと。」

輝かないアイスブルーの髪を揺らし、黄金の瞳を細めてマリカレスは笑った。例えようもなく美しく、それでいて禍々しさを覚える笑みを男―大和へ向けた。

「賭けをしようか、入江。百年保つか保たないか。お前は好きだろう?」

「好きだよ、貴女の考え出す暇つぶしは。ただ、僕生きていられるかな?」

「私の気を引く者が現れ、私の願いを叶える事そのものが無謀ではないか?」

「そう言って大和君の腕あぁしたのは誰でした?」

「あれは自業自得、私は何一つしていない。…日が傾くぞ、そろそろ怪しまれよう。」

マリカレスの言葉に意味は無い。何一つ、無い。ただ紡がれる事は純然たる事実のみ。入江に向けられる言葉の全てが、そうだとマリカレスは語ったのだ。
子供に嘘を教える趣味は無い、と。それが嘘か真かは入江が判断しなければならないのだ。
そうでなくても、マリカレスの謎かけは難解だと言うのに。

「あぁ…貴女と話す方が下らない夜会より遥かに有意義なのに。」

「王族の義務であろ?あれが好いた者の一人として天寿を全う出来れば良いな。何を賭けるかは、相見えた時に聞こう。」

マリカレスに絶対の忠誠を誓い、下僕と呼ばれても構わないと彼女の聖域に立ち寄れる稀な青年は溜め息を残した。
マリカレス王国、その第三王子にして公爵。入江はマリカレスだけを想い、未婚を貫き通さんとしている。

「明日か明後日か、はたまた五年待たなきゃ会ってくれないクセに。」

鈴を転がすような美しい軽やかな笑い声が、入江を送り出した。
ありとあらゆる花が咲き乱れる、時間から切り抜かれたような空に浮く雲に聳える空中庭園。そこに住まうは、1人の女性にして妖魔だ。
日の光を一度も浴びていないような、真珠を思わせる肌。入江は出入りが許されているが、そこには彼女を慕ってやまない者が数名共に在る。とうに世を去った者なのかは、入江も知らないし聞かない。
いずれ願うのだ、マリカレスの傍に在り続けたいと。

「不満げだねぇ、何が面白くない?」

「貴女が契約した事、その内容、入江に聞かせた事だ。」

「たかだか長引いて二百年も保たない契約だ。入江も大和も皆無欲だ。」

自分の魅力を棚に上げて、と仁王は顔をしかめた。

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