テニバサ | ナノ


飢饉のダメージ大


山姥の住む山、として昔から…ってか私に言わせりゃ今も充分昔なんだけどそんな伝説が現住所にはある。力尽きて死んでしまった子供、敗戦して負けた武士が腹を切って事切れている事もある。
私達が生きているのは凄いラッキーだ。

「おっかさん、おっかさん。どうしてこんな所に捨てるの?」

また、運のいい子供が迷い込んで来た。とんだ僻地の山奥で、私が聞こえるくらい大きな声を上げている女の子。

「会いたいよ、おっかさんに。」

真夏は、食料だけじゃなく水すら足りなくなる。真冬は飢饉だと余計に捨てられやすい。
それが、戦国乱世である今の運命。
器量よしなら、どこぞに売られるけど…例外の方が多い。生きる為ならプライドも捨てるんだ。

「…うわぉ。」

集団…って言っても5人の女の子。流石に水ならあげられるけど、こちとら盗人稼業。あんな華奢な女の子達が戦力になるとは考えにくいわ。

「お嬢さん達、行く宛てが無いの?」

距離を取って、話しかけてみる。今日が単独行動で良かったわ…。

「ひっ!や、山姥!?」

「取って食べたりしないわよ、そんな細い体。何が何でも生きたいなら、近場の村まで案内するわ。…えっと、何だっけ。花魁?とかにでもなればいい。」

今で言う風俗は上手く行くと妾になれる。…油ギッシュなおっさんとかの。
世の中イケメンだけとは有り得ない。

「行く!お願い、連れて行って!」

「ならついておいで。お嬢さん達は器量もいいから後は腕次第だ。」

3人は、村で引き取って貰った。…案外上手く行くんだね。お姉さんびっくり。赤也が気付いて付いて来たけど、何も言わないとこを見る限り日常茶飯事なのかも。
有難う、と私の手を握って泣きじゃくる女の子達につられて私も泣いた。もらい手がいる、どんなに辛い仕事でもそれは嬉しい事だから。

「頑張って生きてね。俺より先に死んだら負けだからな。」

「蛍さん、有難う。本当に有難う。」

村から立ち去りたいのは山々なんだけど。2人ばかり強情な女の子が残った。
杏と名乗る気丈な子、咲乃と名乗る気弱すぎる子。どうやら2人は同じ村で捨てられたらしい。

「蛍さんは…何をして生きているの?」

「狩りが多いかな。こんな事は初めてやった。」

今じゃすっかり、釣りと料理しかさせて貰えない情けない大人ですが。たまに果実や雅治から聞いた薬草採るけど。

「わ、わ、私蛍さんについてく!料理は、下手じゃないからお願い!」

「ふっざけんなテメェ!蛍姉ちゃんが苦労して色々やってんのに一緒になんて出来るか!」

説得力、無いよ赤也。杏と赤也でギャンギャン喧嘩した後。
なし崩しに女の子二名様ご案内です。

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