テニバサ | ナノ


パーツが足りない


弓矢、槍、刀、防具、旗などなどエトセトラ。戦場には色んな物が落ちている。…死体もだけど。そんな戦後には私達だけじゃなく、色んな人が色々拾って生き延びようとする。
農民だってそうだ。

「よし、麦ご飯に刀2本が俺の限界。」

兵糧…だったと思うんだけど貯蔵してる辺りでかなりの穀物を拾えた。
この際泥まみれでも気にしない。洗って加熱してしまえば食べられる!
一人称が俺、な理由は至ってシンプル。女だと犯されるかもしんないからだ。お仕事中は姉ちゃん呼び禁止だし。

「若ー!赤也ー!引き上げるぞー!」

「蛍…ちょっと待て!短刀の刃こぼれ無し見つけたから!」

「置いていくからな。蛍、行こう。」

赤也…今姉ちゃん呼びしかけたな。ま、慣れでしょ。一揆が奥州各地で起きた割に、農民の死体が少ない気がする。
…手加減したか、数が少なかったか。

「…何?この遭遇率。死体は珍しくないけど生きてるし…。」

見目麗しい青年?の割には身なりがボロすぎ。一揆に参加したようにも見えないわ。

「おーい、生きてますかお兄さん。」

しゃがんで脈を確認してから、ぺちぺちと頬を叩く。死にかけてはいない。傷が転んだだけにしか見えないからね。

「蛍姉ちゃん、刀は俺が持って行くから。」

「有難う、若。」

「姉ちゃんじゃ洞窟まで運べないだろ。」

照れてる。可愛いなぁ若。ツンデレの子供って何か憎めない。リアルツンデレは鬱陶しいだけだ、と友人には言ってたけど。

「…山姥か?」

「見捨てていい?」

確かに私は山姥っぽく見えるだろう。女だと考えたなら!
髪の毛伸ばしっ放しでバサバサ。爪も無理やり切ってる。小汚い格好で悪かったわね!
…赤也と若に言われて自覚しました。夏場は川で多少洗うけど今後は凄まじい事になる。

「違うのか。…ここに山姥がいるから、と行かされたんだが。」

「違います。お兄さん元気そうだし、私は行くね。生きるのに忙しいの。」

と立ち上がったら。足首掴んで逃がしてくれないんですよ青年。

「この山で、生きる方法を教えてくれ。読み書きなら出来る。」

それさ、凄い上流階級のお兄ちゃんって事じゃ?赤也が追い付いて、国光と名乗った彼が居座るまで1日掛からなかった。
弓が上手いみたいで、よく鳥を仕留める。調理はからっきしだけど世の中女がご飯作る時代だから。
生きる方法は、盗むように言った。いずれ彼もどっかで嫁さん貰って生きる。
みんなが優しい世の中じゃないんだ、戦国は。
村で刀と引き換えに色々調達したし、4人ならまだ余裕がある。
…あの声で、蛍姉さんと呼ばれると恥ずかしい。…数えで17の、国光。

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