テニバサ | ナノ
縁起を担ぐの何時代?
若が私の傍に居る事が当たり前になってから。私よりも夜目が利いて耳もいい若がいきなり飛び起きた。
今までは油を作ったり買ったりして、寝てる間も火を絶やさないようにしてたけど交代で寝起きしながらたき火の見張りが出来る。
「どうしたの?」
「人の足音がする。蛍姉ちゃんは待ってろ。」
「槍は持ちなさいよ。」
小声で会話をして、若は戦場から拾った長い槍を持って居なくなった。…だって夜だから私は見えないんだもん。
「…子供?」
若が連れてきたのは、天パーの痩せた子供だった。ふらふら歩いて、危なっかしい足取り。でもその目はギラギラしてた。
「蛍姉ちゃん、晩飯の残り分けていいか?」
「いいわ。朝ご飯でも2人には多いくらいだし。」
若が鹿を仕留めたから、今日はかなりのリッチな食事だった。桜だか牡丹だか忘れたけどお釣りが山ほど来るんだ、鹿は。
それに…可哀想なくらい痩せてる子を、見捨てられない。
「一気に食うなよ。腹痛くなる。」
「…ありがとう…。」
おぉ、この子何だかいい声してんじゃん。しゃがれてるけど。
ゆっくりと私お手製レンゲを使って、鍋に麦飯突っ込んだ二日目の鍋料理を食べていく。…行く宛て、あるのかしら?
「若、また寝ていいわよ。眠いでしょう?寝なくちゃ大きくなれないわ。」
「蛍姉ちゃんは、どうするんだ。」
「…悲しいからツッコミ入れないで。これ以上大きくなれないんだから。」
「解った。何かあったら、すぐ起こせよ。」
言う前に起きるくせに。私は天パー少年の食事を何となく見ていた。
武器らしい武器は無いみたいだし、殴られたら若が起きる。…頼ってんなぁ。
「…もう、いい。ありがとう。」
「どういたしまして。私は蛍。あの子は若。君の名前は?」
「…赤也。」
すごく、言いにくそうに赤也は呟いた。縁起の悪い名前なのかしら?悪魔ちゃん騒動とかあったけど。
「赤也、か。この山に山姥は居ないよ。自力で生きていくしか道は無い。戦続きと飢饉でどこも辛いから、拾ってもらえない。若は私に付いて来る、って一緒に居るけど…君はどうしたい?」
飢えに苦しむ子供なんて、珍しくない世の中。私だってタダで養うような余裕は無い。恵んでくれる人を探して諸国を渡り歩くには、幼い。
近場の村なら案内ぐらい出来るけど、アフターケアは無理だ。
「姉ちゃんは、ここで何をして生きてんだ?」
「狩りと戦場で盗みをしながら、近場の村で取引をしてる。」
褒められた生き方じゃない事は、よく解っている。火事場泥棒みたいなもんだ。赤也は、私の腕を掴んで縋るような目を向けた。
「姉ちゃん、蛍姉ちゃん。お願い。俺も一緒に連れてって。意地でもついてくから。」
選択肢の意味がない。
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