テニバサ | ナノ


熱中症に注意


村に食材と調味料を求めて行くのは、だいたい4日に一度なんだけど。見かけない顔が増えた。

「あの人は?」

「あぁ、焼き払われた村の生き残りだそうだよ。この辺りまで逃げなきゃいけないらしい。この村も危ないねぇ。」

「そんな近くまで。」

自称情報通っぽいおばちゃんから、商人や落ち武者が来る事が増えたとか、最近隣の村で武士崩れが横暴な真似をして、村人から袋叩きにされて追い出されたとかを聞いた。…四割は雑談だけど、情報はあるに越した事は無い。
山ん中のうちは大丈夫だろうが、この村がやられたら他の村を探さなきゃならない。そんな簡単に見つからないから、世知辛い。

「ただいまー。」

「お帰り蛍姉ちゃん!」

丸太小屋の中では、火を扱わないルールにしてる。家が燃えちゃうからね。赤也がちょうど火の番をしてたらしい。
お帰り、の言葉がどれだけ有り難いか。

「焼き払われた村が増えてるらしいよ。」

「…ここも、か?」

「それは無いよ、何もないから。」

村人だって、私達がどこに住んでるかは知らない。どの辺りか、ぐらいは疑ってるだろうけど一応商売に顔を出すからある程度信用は頂いてる。
山姥の話が未だにあるどころか、有名らしいから目を付けるとしたら何か掘るぐらいだ。
銅とか鉛とかだっけ。石油は無いから石炭も?

「蛍姉ちゃんの話、難しいんだけど。」

「あ、ははは…ごめんごめん。」

未だにこの時代の常識がよく解らない。生理で通じないし、まさか女の子の日なんて隠語も無理。魔王がいるのに何でよ。
まぁ、それはともかく。雪が深いと聞いて私は丸太小屋が心配で仕方ない。
雪下ろしってどうやるの?ニュースみたいに除雪車が来る訳じゃないし、屋根に乗れたとしても雪と人の重さに耐える安心設計なの?

「蛍姉ちゃん?」

「ん?雪降り出したら大丈夫かなって。」

「大丈夫なんじゃね?」

宛てにならない励まし、有難う。国光に聞いてみようかなぁ…。蒸し暑くて、景吾が疲れ気味だし。
梅干し粥とか、レモンの砂糖漬けとか、あればいいんだけどそんな都合のいいものは無いみたいで。漬け物が塩分代わり。
小屋に入ると、景吾が倒れてた。寝てるだけ。

「景吾ー、大丈夫?」

「…暑い。」

夏なんだから仕方ないでしょ。私も夏バテだろうけど食欲落ちて、若と杏が躍起になって私に食べられそうなものを探し回ってるし。

「首にコレ当てて。少しは涼しくなるから。」

絹の無駄遣い、売れなかったから手拭いになった。

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