テニバサ | ナノ


イケメンも通じない


とりあえず、簡単に吹っ飛びそうな屋根が完成。床も組み上げるらしい。
…常日頃、赤也に喧嘩叩き売りしてる若が!どうやって村人から作り方を聞き出したのか聞きたい。

「日が高い内に禊ぎ?に行ってきなさいっ!」

と男の子達を川に送り出して、私は今日もせっせと食べられる草をむしる。
カゴが無いからカンガルースタイル。または猫型ロボットとも言う。背中に非常食とか背負ってるもんで。

「セリ、ナズナ、ゴギョウハコベラホトケノザ。…続き何だっけ?」

小学校で暗唱したと思うんだけど…。春の七草、正月には七草粥っていつから?テレビは好きだが調べる気ナッシングな私には無茶かな。

「秋が、近いなぁ…。」

食卓の野菜が様変わりしてきたし。通り雨にやられてゲロマズな生薬配合?の風邪薬代理飲まされた。胃腸薬なんてまだ優しく作ってあったんだね。

「蛍姉ちゃーん!見て見て!雅治すっげー白髪!」

…色々ツッコミたい。
頭ずぶ濡れの赤也と雅治の色気が、現代なら学生には見えないとか。女に半裸見せて気にしない世の中なのかとか。白髪じゃなくて銀髪だろとか。何で私を探し当てられたのかとか。
確かに素晴らしく綺麗な銀髪なんだけどさ!

「泥だらけだったのにねぇ…本当に綺麗だわ。と言うわけで早く髪の毛拭いて上を着なさい!」

ビシッとねぐらを指差して2人を睨む。片手が放せないんだから仕方ないじゃない。

「…はい。」

雅治は何だかつまらなそうに、返事だけして歩き出した。…一つ一つ片っ端からツッコミ入れたら時間が足りないから。

「名前は知らんが解熱の草見っーけ。」

平べったく、陽向に広がる紫の花。の葉っぱ。とりあえず毒は無いから他に効能があるか、病人で実験していこう。
…今思えば私はとんでもないチャレンジャーだった。雅治が大嘘ぶっこいてまさかのトリカブトでした、とか死んでるからね間違いなく。

「よし、今日はこんなもんでしょ。」

赤也と若が騒いだら絶対、国光が怒鳴りつけてるだろうし。そんでまた刀やら槍やら振り回して、喧嘩に限りなく近い稽古をするんだよ。
非暴力主義じゃないんだけど、あんまり武力は使いたくない。
脱脂綿はおろか包帯すら高級なんだよ!布はなかなか手に入らないの!真っ当に生きてたら!

「たっだいまー。…あれ?若と咲乃は?」

これ以上に無く相性の悪い2人が不在?咲乃は意地でも1人で歩かすな、と言ってなかったかい?君達。

「蛍姉さん…。咲乃が異相を見て逃げ出したのを追い掛けた。」

「雅治の?」

「違うわ、そこで寝てる男なの。」

マネキンさながらに整った顔の、茶髪青年?が寝ていた。…美形ばっかりだなここに来る野郎は。

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