ぶっ飛ばす | ナノ
眩しい程に輝く



「おらおらどうしたぁ!こんなもんじゃ佐々木遼様はくたばらねえぞ!」

累々たる男達の中、君臨するかのようによろめきもせず立ち、所々赤く染まったTシャツを着た遼が勇ましく吼えた。夜の街に轟くハスキーヴォイスは、始まりと終わりの合図。
カラン、と引っこ抜いた信号機を投げ捨てて、肩を鳴らしながら愛車となったバイクに跨る。

「りっちゃん、大会終わったんじゃなかったか?」

カランコロンと牡丹灯籠よろしく、千歳は遼の下へ歩み寄った。
冷徹なまでの残酷さ、獰猛でありながら繊細な身のこなし。戦いの中でこそ、千歳には遼が最も美しく映るのだ。

「負けたたい。ばってん、遼に会いたかとよ。」

熱に煌めき、鋭い光を放つ刃にも似た瞳を叶うなら見ていたい。拒絶にも似た輝きは痛みを思わせる。
雄々しく、大の大人さえ恐れる関東最強が女だと判るなり、千歳は隙あらば口説く。

「知ってる。」

「千歳ぇぇぇ!何遼口説いとんねん!」

騒ぎを聞きつけたのか、バイトの格好で蓮が千歳向けて素晴らしい蹴りを披露した。

「おーい、ヒール折れるぞレイナ。」

セクシーなドレスに、濃い化粧の蓮がかなり好戦的だとこの界隈では有名な話になっていた。
遼とて、流れる噂を抑え込む事はかなり大変な作業で難しい。だから、放置している。
千歳は倒れ、ピクピクと痛みに耐えていた。遼はそれ以上の怪我さえ意地で耐えるのだ。勝てる事が身長だけ、と言うのは切ない。

「折れてん大丈夫や。スペアあるし。」

「そりゃいいけど…お前の元先輩、痛そうだぞ。」

「フッ、天罰や。」

明らかに人為的な天罰もあったものである。しかし、遼は気にも留めない。

「あ、そ。俺いい加減眠いからとりあえずみっちゃんちで手当てして寝る。神奈川の潜伏先、早寝早起きすぎてダメなんだ。」

関東各地に点在する遼の潜伏先は、至れり尽くせりの場所とは限らない。

「そか。コレはほっといてん大丈夫や。」

「へいへい。んじゃ、ちゃんと化粧直せよ?」

鋭い目だが、笑みを浮かべると数多の女性を虜にしてしまう罪作りな遼。男と勘違いされる理由の一つだ。蓮はひらひらと手を振って遼を見送った。

「はるるーん、起きてっかー?」

「父さんなら寝ている。何をしに来た。」

「寝に来た。布団ひくのめんどくせぇし、みっちゃん床借りるぜ。」

完全に眠気で半眼の遼に逆らって無事では済まない。仕方なく、寝ていた手塚は着替えさせてベッドを譲ったが一緒に眠るハメになっていた。

一緒に寝る、の真実

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